コラム

玉緑茶とは?釜炒り製法と勾玉状が特徴のお茶を解説

2025.11.21

玉緑茶とは、日本茶の一種で、勾玉のような丸い形状が特徴的なお茶です。
一般的な煎茶とは製造工程が一部異なり、その違いが見た目や味わいに独特の個性を与えています。

この記事では、玉緑茶の基本的な知識として、その特徴や種類、産地、そして美味しい淹れ方について網羅的に解説します。
蒸し製と釜炒り製という2つの製法によって生まれる風味の違いも紹介するため、玉緑茶とは何かを知りたい方はぜひ参考にしてください。

玉緑茶とは勾玉のような形をした日本茶のこと

玉緑茶の最も大きな特徴は、茶葉が丸みを帯び、古代の装身具である勾玉のような形をしている点です。
一般的な煎茶が針のようにまっすぐな形状をしているのに対し、玉緑茶は製造工程で茶葉の形を整える「精揉(せいじゅう)」という作業を行いません。

そのため、茶葉は揉みながら乾燥させる過程で自然に丸まっていきます。
この独特の形状から「ぐり茶」と呼ばれることもあり、茶葉が丸いことからそのように名付けられました。
見た目の違いだけでなく、この形状は淹れた時のお茶の成分の溶け出し方にも影響を与え、味わいにも個性を生み出しています。

製法の違いで2種類に分けられる玉緑茶

玉緑茶は、製造の初期段階である殺青という、茶葉の発酵を止めるための加熱方法の違いによって、大きく2種類に分けられます。
一つは、高温の蒸気で茶葉を蒸して加熱する蒸し製玉緑茶です。

もう一つは、大きな釜で茶葉を直接炒って加熱する釜炒り製玉緑茶となります。
この最初の加熱方法の違いが、それぞれのお茶の香りや味わいに決定的な特徴を与えるため、同じ玉緑茶という名称でも、蒸し製と釜炒り製では全く異なる風味を楽しめます。

爽やかな香りと旨味が特徴の「蒸し製玉緑茶」

蒸し製玉緑茶は、茶葉の酸化酵素の働きを止めるために「蒸し」の工程を用いて作られるお茶です。この製法は、茶葉本来のフレッシュな香りを保ちやすいのが特徴です。そのため、蒸し製玉緑茶は、青々しく爽やかな香りと、しっかりとした旨味やコクを感じられます。

味わいは煎茶に近いですが、蒸し製玉緑茶は茶葉を針状に整える精揉(せいじゅう)工程を行わないため、茶葉が丸い形状(勾玉状)をしています。この丸い形状のため、お湯を注いだ際に茶葉の成分がゆっくりと抽出される傾向があります。これにより、渋みが出にくく、まろやかで深みのある味を楽しめるのが魅力です。甘みとコクのバランスが良く、多くの人に親しまれています。

釜で炒ることで生まれる香ばしさが魅力の「釜炒り製玉緑茶」

釜炒り製玉緑茶は、生葉を蒸す代わりに、高温に熱した釜で直接炒ることで酸化を止める、中国伝来の製法で作られます。
この製法によって生まれる「釜香(かまか)」と呼ばれる、独特の香ばしい香りが最大の特徴です。
この香りはどこか懐かしさを感じさせ、心を落ち着かせてくれます。
味わいは、蒸し製に比べて渋みが少なく、すっきりとしていて爽やかな後味が楽しめます。

現在、日本茶の多くは蒸して作られており、釜炒り茶の生産量はごくわずかです。
そのため、釜炒り製玉緑茶は希少価値の高いお茶としても知られています。

玉緑茶の形が決まる!一般的な煎茶との製造工程の違い

玉緑茶の勾玉のような丸い形状は、一般的な煎茶の製造工程との決定的な違いによって生まれます。
煎茶の製造工程には、茶葉を揉みながら熱風で乾燥させ、針のようにまっすぐな形に整える「精揉(せいじゅう)」という工程が含まれています。
この工程により、私たちがよく目にする煎茶の美しい形状が作られます。

一方、玉緑茶の製造工程ではこの精揉を行いません。
茶葉を揉む工程の後、そのまま回転するドラム式の乾燥機などで攪拌しながら乾燥させるため、茶葉は自然に丸みを帯びた独特の形に仕上がります。
この工程の違いが、見た目だけでなく味の抽出の仕方にも影響を与えています。

玉緑茶の主な産地は九州地方

玉緑茶の主な産地は九州地方に集中しており、地域によって特色ある玉緑茶が生産されています。
特に釜炒り製玉緑茶は、佐賀県の嬉野(うれしの)が発祥の地として全国的に有名です。
嬉野茶といえば、この釜炒り製玉緑茶を指すことが多く、伝統的な製法が受け継がれています。

一方、蒸し製玉緑茶の生産量では長崎県が日本一を誇り、「そのぎ茶」などのブランドで知られています。
その他、熊本県の「矢部茶」や宮崎県の「釜炒り茶」など、九州各県で個性豊かな玉緑茶が作られています。
日本茶全体の生産量から見ると、玉緑茶は比較的希少な種類といえます。

玉緑茶の風味を最大限に引き出す美味しい淹れ方のコツ

玉緑茶の風味を最大限に引き出すには、お湯の温度が重要なポイントです。
熱すぎるお湯で淹れると、渋みや苦味成分が多く抽出されてしまうため、一度沸騰させたお湯を70℃から80℃程度に冷ましてから使用するのがおすすめです。

茶葉の量は1人あたりティースプーンに軽く1杯(約3g)を目安とし、急須に入れた茶葉にお湯を注いだら、1分ほど静かに蒸らします。
玉緑茶は茶葉が丸まっているため、煎茶よりも少し時間をかけてゆっくりと開くのを待つことで、旨味と香りが十分に引き出されます。
二煎目以降は少し温度を上げて淹れると、また違った味わいを楽しめます。
玉露のように、より低い温度でじっくり淹れると、濃厚な甘みと旨味を堪能できます。

まとめ

玉緑茶は、製造工程で茶葉の形を整える精揉を行わないことによって生じる、勾玉のような丸い形状が特徴の日本茶です。
製法は大きく二つに分かれ、蒸気で加熱する蒸し製は爽やかな香りと深い旨味を持ち、釜で炒って加熱する釜炒り製は釜香と呼ばれる独特の香ばしさが魅力です。

主な産地は佐賀県の嬉野や長崎県をはじめとする九州地方が中心となります。
淹れる際には70℃から80℃の少し冷ましたお湯を使うことで、渋みを抑えながら茶葉本来の甘みと旨味を引き出すことが可能です。
形状と製法の違いが、玉緑茶ならではの個性的な風味を生み出しています。

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