
白茶はその繊細な味わいと上品な香りで知られるお茶の一種です。
主に中国で生産される中国茶であり、製造工程が非常にシンプルな点に大きな特徴があります。
緑茶や紅茶とは異なる独特の風味を持ち、渋みが少なくすっきりとした飲み口が魅力です。
この記事では、白茶の基本的な知識から、他のお茶との違い、代表的な種類、そして自宅で美味しく淹れる方法までを詳しく解説します。
目次
白茶とはどのようなお茶?
白茶は、中国の福建省を主な産地とする弱発酵茶に分類されるお茶です。
近年では雲南省や、中国国外のインド、ネパール、スリランカ、さらには日本でも生産されるようになっています。
その名前の由来は、茶葉、特に新芽が白い産毛でびっしりと覆われている様子からきています。
製造工程は、茶葉を摘んだ後、熱処理をせずに長時間かけてじっくりと自然乾燥させる萎凋と、その後の乾燥のみという非常にシンプルなものです。
この製法により、茶葉本来のピュアで繊細な味わいが引き出されます。
白茶の製造工程からわかる特徴
白茶の最大の特徴は、そのシンプルな製造工程にあります。
茶葉を摘んだ後、揉む工程を行わず、屋外または室内で長時間かけてゆっくりと萎凋させ、わずかに発酵を進めます。
その後、低温でじっくりと乾燥させて仕上げます。
この加熱処理をしない自然な製法により、茶葉の酸化酵素の働きが完全には止まらず、微発酵の状態が生まれます。
その結果、お茶の水色は淡い黄金色や杏色となり、味わいは渋みが少なく、まろやかで上品な甘みを持つようになります。
茶葉そのものの力が試される、ごまかしのきかない製法とも言えます。
白茶ならではの繊細な味と香り
白茶の味は、非常に繊細で上品な甘みが特徴です。
渋みや苦味はほとんど感じられず、口に含むとまろやかで優しい味わいが広がります。
後味もすっきりとしており、リフレッシュしたい時に最適です。
その香りもまた特徴的で、花や蜜を思わせるようなほのかな甘い香りが立ち上ります。
主張が強すぎないため、食事との相性も良く、素材の味を邪魔しません。
このように、白茶の繊細な味と香りは、製造工程で茶葉へのダメージを最小限に抑え、素材本来の良さを引き出すことから生まれるものです。
他のお茶との違いを製法から解説
緑茶、紅茶、烏龍茶、白茶は、すべて同じ「チャノキ」という植物の葉から作られますが、その違いは製造工程、特に「発酵」の度合いによって生まれます。
日本茶の代表である緑茶は発酵させない不発酵茶ですが、白茶はわずかに発酵させる微発酵茶に分類されます。
この製法の違いが、それぞれのお茶の色や味、香りに多様な個性をもたらしています。
ここでは、白茶と他のお茶との製法上の違いを具体的に見ていきます。
緑茶との違いは発酵の違い
白茶と緑茶の最も大きな違いは、発酵度の違いです。
緑茶は、茶葉を摘み取った直後に蒸したり炒ったりして加熱処理を施し、酸化酵素の働きを完全に止めることで発酵させずに作る「不発酵茶」です。
これにより、茶葉の緑色と、爽やかな香りや旨み、適度な渋みが保たれます。
一方、白茶は加熱処理を行わず、長時間かけて萎凋させる過程でごくわずかに発酵が進む「微発酵茶」です。
この発酵度の違いが、緑茶の持つフレッシュな風味と、白茶の持つ柔らかな甘みや丸みのある味わいといった、異なる個性を生み出す要因となっています。
紅茶・烏龍茶との違いは発酵の度合い
白茶と紅茶、烏龍茶との違いは、発酵の度合いにあります。
紅茶は、茶葉に含まれる酸化酵素を完全に働かせて作る「全発酵茶」であり、これにより豊かなコクと深い赤色の水色が生まれます。
一方、烏龍茶は、発酵を途中で止めて作る「半発酵茶」で、不発酵の緑茶と全発酵の紅茶の中間に位置し、華やかな香りが特徴です。
これらに対して白茶は、ごくわずかに発酵させた「微発酵茶」です。
発酵度が最も低いため、味わいや香りは非常に繊細で、水色も淡くなります。
このように、同じ茶葉から作られながらも、発酵の度合いをコントロールすることで多様な風味のお茶が作り出されます。
代表的な白茶の種類を紹介
白茶には摘み取る茶葉の部位や時期によっていくつかの種類が存在します。
それぞれに異なる特徴があり、味わいや香り、価格も様々です。
代表的な銘柄としては新芽のみで作られる最高級品の「白毫銀針」、新芽と若葉をブレンドした「白牡丹」、そして成長した葉を主原料とする「寿眉」が挙げられます。
これらの違いを知ることで自分の好みやシーンに合った白茶を見つけることができます。

白毫銀針(はくごうぎんしん)
白毫銀針は、白茶の中でも最高級品として知られる銘柄です。
その理由は、春の早い時期に芽吹いた、まだ開いていない新芽(芽心)のみを丁寧に手摘みして作られるため、生産量が非常に限られているからです。
白い産毛(白毫)に覆われた茶葉の見た目が、銀色の針のように見えることからその名が付けられました。
味わいは極めて繊細かつ上品で、ほのかな甘みと雑味のないクリアな後味が特徴です。
水色は非常に淡く、上品な香りが楽しめます。
希少価値が高いため、他の白茶に比べて価格も高いですが、一度は味わってみたい特別な逸品です。
白牡丹(はくぼたん)
白牡丹は、新芽と若い葉を一緒に摘んで作られる白茶の代表的な銘柄です。
産毛に覆われた新芽と緑色の若葉が混ざった様子が、牡丹の花びらのように見えることから名付けられました。
新芽由来の甘みと、若葉がもたらす爽やかさが絶妙に調和しており、花のような甘い香りとすっきりとした味わいが楽しめます。
白毫銀針に次ぐ高級品とされますが、比較的手に入りやすく、白茶の魅力を知るための入門としても適しています。
バランスの取れた味わいで、多くの人に愛される人気の高い白茶です。
寿眉(じゅび)
寿眉は白毫銀針や白牡丹を摘んだ後の少し成長した茶葉や硬い葉を主原料として作られる白茶です。
新芽の含有量が少なく葉の部分が多いため味わいはよりしっかりとしておりコクを感じられます。
香りは干し草や熟した果実のようだと表現されることもあり落ち着いた風味が特徴です。
価格が比較的リーズナブルであるため日常的に楽しむのに向いています。
茶葉が大きく開くため淹れる際には大きめの急須を使うと良いでしょう。
白茶の中でも力強い味わいを求める方におすすめの銘柄です。
自宅でできる白茶の美味しい淹れ方
白茶が持つ繊細な風味を最大限に引き出すためには、淹れ方のいくつかのポイントを押さえることが重要です。
特にお湯の温度は白茶の味わいを大きく左右する要素となります。
しかし決して難しい作法が必要なわけではありません。
ここでは自宅にある道具で誰でも簡単に実践できる、白茶の美味しい淹れ方の手順とコツを解説します。
この方法をマスターすれば、白茶本来の魅力を存分に楽しむことができます。

準備する道具と茶葉の量
白茶を淹れるために特別な道具は必要なく、手持ちの急須やティーポットで十分です。
ガラス製の茶器を使用すると、茶葉がゆっくりと開いていく様子や、淡く美しい水色を目で見て楽しめるため、特におすすめです。
茶葉の量は、150mlのお湯に対して3g程度が基本的な目安となります。
白茶の茶葉はかさ高いため、見た目では多く感じるかもしれませんが、まずはこの量を基準に淹れてみてください。
好みに応じて茶葉の量を加減することで、自分に合った濃さを見つけることができます。
正確な量を知るためには、キッチンスケールがあると便利です。
お湯の温度と抽出時間の目安
白茶の繊細な甘みや香りを引き出すためのお湯の温度は、淹れ方や求める味わいによって異なります。一般的には80〜90℃が推奨されることもありますが、沸騰した熱湯(100℃)を使用する方法もあります。高温で淹れると香りがより引き立ち、味わいも深くなる傾向があり、低めの温度でじっくり淹れると、まろやかで上品な味わいになることがあります。渋みや苦味を抑えたい場合は、熱すぎるお湯を避けるのが良いでしょう。お湯の温度を調整するには、沸騰したお湯を一度別の器(湯冷ましやマグカップなど)に移すと、5〜10℃ほど温度が下がるとされています。
抽出時間は、1煎目で20秒〜3分程度と幅があり、茶葉の種類や好みによって調整するのがおすすめです。白茶は品質が良いものだと何煎も楽しむことができ、2煎目以降は蒸らし時間を少しずつ長くしていくと、変化する味わいを最後まで楽しめます.
美味しい淹方の手順を解説
まず、使用する急須やポットに熱湯を注ぎ、茶器全体を温めてからお湯を捨てます。
次に、用意した茶葉を温まった茶器に入れます。
茶葉の香りや状態を整えるため、少量のお湯を注いで茶葉を潤し、すぐにそのお湯を捨てる「洗茶」という工程を行うこともありますが、繊細な白茶の場合は省略しても構いません。
その後、80〜90℃に調整したお湯を静かに注ぎ入れ、蓋をして2〜3分蒸らします。
時間が経ったら、お茶の濃さが均一になるように少しずつ、最後の一滴まで絞り切るようにカップに注ぎ分けます。
すっきり飲める水出し白茶の作り方
白茶は、水出しで淹れることによって、お湯で淹れた時とはまた違った魅力を楽しめます。
低温でじっくりと抽出するため、渋みや苦味の原因となるタンニンやカフェインが溶け出しにくく、白茶本来の甘みや旨みが際立った、まろやかですっきりとした味わいになります。
作り方は非常に簡単で、冷水ポットなどの容器に茶葉と水を入れ、冷蔵庫で一晩(6〜8時間程度)置いておくだけです。
茶葉の量は水1リットルに対して10g程度が目安ですが、好みに合わせて調整してください。
手軽なティーバッグタイプのものを使っても美味しく作れます。
暑い季節にぴったりの、ごくごく飲める爽やかな飲み方です。
まとめ
白茶は、加熱や揉む工程をほとんど行わないシンプルな製法で作られるため、茶葉そのものが持つ繊細な甘みや香りを楽しめる微発酵茶です。
渋みが少なくすっきりとした味わいは、緑茶や紅茶、烏龍茶とは一線を画す独自の魅力を持っています。
最高級の白毫銀針から日常的に楽しめる寿眉まで、種類によって異なる風味を飲み比べるのも一興です。
以前は専門店でしか手に入りにくいお茶でしたが、現在ではオンラインの通販サイトなどでも多様な銘柄が販売されており、気軽に試すことができます。
この記事をきっかけに、白茶の奥深い世界に触れて、日々のティータイムをより豊かなものにしてみてはいかがでしょうか。







