
自分で淹れたお茶を水筒に入れて持ち運んだり、時間が経ってから飲もうとしたりした際に、きれいな緑色だったはずのお茶が茶色に変色していて驚いた経験はありませんか。
この現象は、緑茶に含まれる成分が原因で起こります。
この記事では、緑茶が茶色になる仕組みと、変色したお茶は飲んでも安全なのか、そして水筒でもきれいな色を保つための具体的な対策について解説します。
目次
なぜ緑茶は茶色くなるの?主な原因はカテキンの酸化
淹れたての緑茶が時間が経つと茶色に変色するのは、主に緑茶の渋み成分である「カテキン」が酸化するためです。
なぜこのような変化が起こるのかというと、カテキンが空気中の酸素に触れることで化学反応を起こし、テアルビジンという赤色の成分に変化するからです。
この酸化反応は、温度が高いほど、また光や空気に触れる時間が長いほど進みやすくなるため、緑茶の色が徐々に変わっていきます。
酸化によって緑茶の色が赤茶色に変わる仕組み
緑茶に含まれるカテキンは、ポリフェノールの一種であり、酸化酵素の働きによって酸化しやすい性質を持っています。
カテキンが空気中の酸素と結びつくと、テアフラビンというオレンジ色の成分を経て、最終的にテアルビジンという赤褐色の成分へと変化します。
このテアルビジンが多く生成されることで、緑茶の色が赤茶色に見えるようになります。
実は、烏龍茶や紅茶が茶色や赤色をしているのも、製造過程で茶葉を発酵(酸化)させることで、このテアルビジンを意図的に生成しているためです。
つまり、煎茶が酸化すると、烏龍茶や紅茶の色に近づいていくことになります。
味や香りも変化する?渋みが増して風味が落ちる
緑茶が酸化すると、色の変化だけでなく味や香りにも影響が出ます。
酸化が進むにつれてカテキンが変化し、緑茶特有の爽やかな香りが失われ、代わりに酸化臭と呼ばれる、少し古くなった油のような不快な香りが発生することがあります。
また、味の面では、渋みが強くなる傾向があります。
淹れたての緑茶が持つ旨味や甘みが減少し、全体的に風味が落ちてしまいます。
このため、変色した緑茶は、見た目だけでなく味わいの点でも、淹れたての状態とは大きく異なるものになります。
茶色くなった緑茶は飲んでも大丈夫?体への影響は?
時間が経って茶色く変色してしまった緑茶を見て、飲んでも体に害はないのか不安に思うかもしれません。
基本的には、カテキンが酸化したこと自体が直接的な害になるわけではありません。
しかし、「宵越しのお茶は飲むな」ということわざがあるように、長時間放置されたお茶には注意が必要です。
衛生面でのリスクが高まるため、変色したお茶を飲む際は状況をよく判断することが求められます。
「宵越しのお茶は飲むな」と言われる本当の理由
古くから「宵越しのお茶は飲むな」と言い伝えられていますが、これは単に味が落ちるからというだけではありません。
主な理由は衛生面にあります。
お茶にはカテキンだけでなく、タンニンやタンパク質などの栄養分も含まれており、これらが雑菌の繁殖を助ける原因となります。
特に、一晩放置するなど長時間常温で置いておくと、空気中の細菌が混入・増殖し、食中毒を引き起こす可能性があります。
そのため、前の日に淹れてそのまま放置したお茶を飲むのは避けるべきだとされています。
酸化したお茶自体に害はないが雑菌の繁殖に注意
緑茶のカテキンが酸化すること自体は、食品として自然な化学変化であり、酸化した成分が毒性を持つわけではありません。
そのため、淹れてから数時間で変色した程度であれば、飲んでも特に健康上の問題はありません。
ただし、注意すべきは雑菌の繁殖です。
お湯で淹れたお茶が冷めていく過程のぬるい温度は、細菌が最も増殖しやすい環境です。
急須や湯呑みに淹れたまま長時間放置すると、雑菌が繁殖しやすくなります。
変色に加えて、異臭がしたり、表面に膜が張っていたりする場合は、雑菌が繁殖している可能性が高いため、飲むのをやめましょう。
今日からできる!緑茶の変色を防ぐ4つの対策
緑茶の変色は、淹れ方や保存方法を少し工夫するだけで防ぐことが可能です。
お茶の成分であるカテキンの酸化をいかに抑えるかがポイントになります。
ここでは、家庭で手軽に実践できる4つの具体的な対策を紹介します。
これらの方法を取り入れることで、淹れたてのきれいな緑色と美味しい風味をより長く楽しむことができます。
水筒で持ち運ぶ際にも役立つ方法なので、ぜひ試してみてください。

【対策1】酸化を防ぐビタミンC(レモン汁など)を加える
緑茶の変色を防ぐ最も手軽な方法の一つが、ビタミンCを加えることです。
なぜビタミンCが有効かというと、ビタミンCには強力な抗酸化作用があり、カテキンよりも先に酸素と結びつく性質があるためです。
これにより、カテキンの酸化が抑制され、緑茶のきれいな緑色を長持ちさせることができます。
具体的には、淹れたお茶にレモン汁を数滴加えたり、ドラッグストアなどで販売されているビタミンCの粉末を少量溶かしたりするだけで効果があります。
味の変化が気にならない範囲で少量加えるのがポイントです。
【対策2】カテキンの抽出を抑える水出しで淹れる
高温のお湯で淹れると変色しやすい緑茶ですが、水出しで淹れることで変色を大幅に抑えることができます。
緑茶の渋み成分であり、変色の原因となるカテキンは、温度が高いほど多く抽出される性質があります。
一方、水でじっくりと時間をかけて抽出すると、カテキンの溶け出す量が抑えられます。
その結果、酸化の原因物質が少ないため、時間が経っても変色しにくくなります。
また、水出しにすると、渋みが少なく旨味成分のテアニンが引き立つため、まろやかで甘みのある味わいのお茶を楽しめるというメリットもあります。
【対策3】水筒に入れる際は空気に触れないよう満タンに
水筒に緑茶を入れて持ち運ぶ際は、酸化の原因となる空気との接触をできるだけ減らすことが重要です。
水筒に緑茶を入れるとき、中途半端な量ではなく、容器の口元ぎりぎりまで満タンに注ぐようにしましょう。
こうすることで、水筒内部の空気の層が少なくなり、お茶が酸素に触れる面積を最小限に抑えられます。
持ち運び中に水筒が揺れても、お茶が内部で激しく動き回って空気を巻き込むのを防ぐ効果もあります。
この一手間を加えるだけで、酸化の進行を遅らせ、出先でもきれいな色の緑茶を楽しむことができます。
【対策4】茶葉の劣化を防ぐ正しい保存方法
淹れたお茶だけでなく、淹れる前の茶葉自体の品質を保つことも変色を防ぐ上で重要です。
茶葉は非常にデリケートで、空気(酸素)、光、湿気、高温、そして周りの匂いの影響を受けやすく、これらはすべて酸化や劣化の原因となります。
特に煎茶などの緑茶は、開封後そのまま放置すると急速に風味が落ちてしまいます。
茶葉を保存する際は、光を通さない密閉性の高い容器(茶筒など)に入れ、直射日光や高温多湿を避けた冷暗所で保管しましょう。
長期間保存する場合は、密閉容器に入れて冷蔵庫や冷凍庫で保存するのも有効な方法です。
ペットボトルの緑茶がきれいな緑色を保っている理由
市販のペットボトル緑茶は、購入してから時間が経ってもきれいな緑色を保っています。
これは、家庭で淹れるお茶とは異なり、製造過程で変色を防ぐための特別な工夫が施されているためです。
主に、酸化防止剤の添加と、容器内の酸素を徹底的に排除する技術が用いられています。
これらの技術により、ペットボトルのお茶は長期間にわたって品質を維持することが可能になっています。

酸化防止剤(ビタミンC)の添加で変色を抑制している
市販されているペットボトル緑茶の原材料名を見ると、ほとんどの場合「ビタミンC」と表示されています。
これは栄養強化のためではなく、「酸化防止剤」としての役割で添加されているものです。
ビタミンCは、お茶に含まれるカテキンが酸化するよりも先に酸素と反応する性質を持っています。
この働きによってカテキンの酸化が防がれ、緑茶本来の鮮やかな緑色が長期間維持されます。
家庭で変色対策としてレモン汁を加えるのと同じ原理を、製品の品質安定のために応用しているのです。
製造工程で酸素を徹底的に取り除いている
ペットボトル緑茶の製造工場では、酸化防止剤の添加に加えて、物理的に酸化の原因となる酸素を取り除く工夫も行われています。
お茶をペットボトルに充填する際、容器内の空気を窒素ガスに置き換える「窒素充填」という技術が用いられるのが一般的です。
これにより、容器内に残る酸素の量を極限まで減らし、お茶が酸素に触れる機会をなくします。
この脱酸素技術とビタミンCによる酸化防止を組み合わせることで、開栓するまでの間、淹れたてに近い色と風味を長期間保つことが可能になっています。
まとめ
緑茶が茶色くなる主な原因は、渋み成分であるカテキンが空気中の酸素に触れて酸化することにあります。
この酸化自体に直接的な害はありませんが、長時間常温で放置すると雑菌が繁殖する可能性があるため注意が必要です。
お茶の変色を防ぐためには、カテキンの酸化を抑制することが重要です。
具体的には、酸化防止効果のあるビタミンC(レモン汁など)を加える、カテキンの抽出が穏やかな水出しで淹れる、水筒に入れる際は満タンにして空気に触れさせない、といった方法が有効です。
また、淹れる前の茶葉を適切に保存することも、美味しいお茶を淹れるための基本となります。







