コラム

お茶出しマナーの基本|会社での来客対応で好印象を与えるコツ

2025.9.25

ビジネスシーンにおけるお茶出しは、来客への感謝とおもてなしの心を示す重要な役割を担います。
単にお茶を運ぶ作業ではなく、その立ち居振る舞い一つひとつが企業の印象を左右するからです。
基本的なマナーを身につけて丁寧な対応を心がけることで、お客様に好印象を与え、円滑な商談や良好な関係構築に貢献できます。
新入社員や若手社員にとって、お茶出しはビジネスマナーを実践する最初の機会となることも多いでしょう。

目次

会社でのお茶出しで最初に押さえるべき5つの基本マナー

来客対応でのお茶出しには、守るべき基本的なルールが存在します。
この基本を理解しているかどうかで、お客様に与える印象は大きく変わります。
お茶の出し方の順番や器の扱い方など、細かい配慮が求められる場面も少なくありません。
これから解説する5つの基本マナーは、どんな状況でもスムーズに対応するための土台となります。
これらを確実に押さえて、自信を持っておもてなしを行いましょう。

基本1:お茶は役職が最も高いお客様から順番にお出しする

お茶を出す順番は、役職の高い人から行うのが原則です。
まずお客様側、次いで自社側の順にお出しし、それぞれ役職の高い順に進めます。
お客様の役職が分からない場合は、席次で判断しましょう。
一般的に入り口から最も遠い席が上座となり、そこに座っている方が最も役職が高いと考えられます。
お客様にお出しした後、自社の社員にも役職の高い順にお茶を出します。
自社の役職順も事前に確認しておくと、スムーズな対応ができます。
この順番を間違えることは失礼にあたる可能性があるため、正確に覚えておく必要があります。

基本2:お盆の上では湯呑と茶托を別々にして運ぶ

お茶を運ぶ際は、お盆の上で湯呑と茶托をセットせず、別々の状態で運びます。
これは、運んでいる途中に湯呑が滑って倒れたり、お茶がこぼれたりするのを防ぐためです。
応接室に入り、サイドテーブルなどにお盆を置いてから、お客様にお出しする直前に湯呑を茶托に乗せるのが正しい手順となります。
お盆は胸の高さで、両手でしっかりと持つことで安定して運べます。
清潔な布巾をお盆に敷いておくと、食器が滑りにくくなるだけでなく、見た目もより丁寧な印象になります。

基本3:お客様から見て絵柄が正面になるように湯呑を置く

湯呑にお客様の目を引く絵柄がある場合、その絵柄がお客様の正面に来るようにしてお出しするのがマナーです。
これは、おもてなしの心遣いを示すための重要なポイントになります。
絵柄がない場合でも、湯呑に正面が定められているデザインであれば、それを意識して配置します。
また、木目の茶托を使用する際は、木目がお客様に対して横向きになるように置くと美しく見えます。
お茶を出す直前に湯呑を茶托に乗せる際、これらの向きを最終確認し、丁寧にテーブルに置くことで、細やかな配慮が伝わります。

基本4:ペットボトルのお茶は開封せずにお出しする

近年では、湯呑ではなくペットボトルのお茶をお出しする機会も増えています。
この場合、衛生的な観点から開封せず、キャップが閉まった状態のまま提供するのが基本マナーです。
お客様が好きなタイミングで飲めるようにという配慮も含まれます。
ペットボトルをそのままテーブルに置くのではなく、コースターを敷いた上に置き、お客様が自分で開封して飲めるようにグラスを添えると、より丁寧な印象を与えられます。
もしお客様がすぐに飲みたい様子であれば、「お開けしましょうか」と一言声をかける心遣いも大切です。

基本5:机に置くときは音を立てないよう静かに扱う

お茶をテーブルに置く際は、音を立てないように細心の注意を払います。
食器がぶつかる音は、会議や商談の雰囲気を壊してしまう可能性があります。
茶托を先にテーブルへ置き、その上に湯呑を乗せるという手順を踏むことで、音を最小限に抑えられます。
すべての動作を両手で丁寧に行うことを心がけ、落ち着いた所作を意識すると良いでしょう。
静かに、そして丁寧にお茶を出すことで、相手を敬う気持ちが伝わり、場の空気を和ませることにもつながります。
些細なことですが、こうした配慮の積み重ねが信頼関係を築きます。

来客に喜ばれる美味しいお茶の淹れ方4ステップ

お茶出しでは、マナーだけでなくお茶そのものの美味しさも、おもてなしの質を左右する重要な要素です。
心を込めて丁寧に淹れたお茶は、お客様に喜ばれ、会話のきっかけになることもあります。
難しい手順は必要なく、いくつかの基本的なポイントを押さえるだけで、味も香りも格段に良くなります。
これから紹介する4つのステップを実践し、見た目の美しさだけでなく、味でも満足してもらえるようなお茶の出し方を目指しましょう。

ステップ1:湯呑にお湯を注いで事前に温めておく

美味しいお茶を淹れるための最初のステップは、使用する湯呑をあらかじめ温めておくことです。
沸騰したお湯を湯呑の8分目まで注ぎ、しばらく置いて湯呑自体を温めます。
これにより、淹れたお茶がすぐに冷めてしまうのを防ぎ、温かい状態を長く保つ効果があります。
お茶を急須から注ぐ直前に、湯呑の中のお湯は捨て、清潔な布巾で内側の水気を軽く拭き取ります。
このひと手間を加えるだけで、お茶の香りがより引き立ち、お客様に美味しく味わってもらえます。
特に寒い季節には欠かせない配慮といえるでしょう。

ステップ2:急須に人数分の茶葉とお湯を入れてしっかり蒸らす

次に急須に適切な量の茶葉とお湯を入れます。
一般的な煎茶の場合、茶葉の量は1人あたりティースプーン1杯(約2〜3g)が目安です。
お湯の温度は非常に重要で、煎茶であれば一度沸騰させたお湯を70〜80度まで冷ましたものを使うと、渋みや苦味を抑え、旨味成分をしっかり引き出せます。
お湯を急須に注いだらすぐに湯呑に注がず、蓋をして1分ほど蒸らします。
この蒸らし時間によって茶葉がゆっくりと開き、お茶本来の深い味わいと豊かな香りが生まれます。
急がず丁寧に行うことが大切です。

ステップ3:濃さが均一になるように複数の湯呑へ交互に注ぐ

お茶を複数の湯呑に注ぐ際は、濃さが均一になるように「回し注ぎ」を行います。
これは、1つの湯呑に一度で注ぎ切るのではなく、「1→2→3」の順に少し注いだら、次は「3→2→1」と逆の順に戻りながら、数回に分けて注いでいく方法です。
こうすることで、後から注がれるほど濃くなるお茶の成分が、すべての湯呑に均等に行き渡ります。
急須は片手で持ち、もう一方の手を蓋に軽く添えると、注ぐ際に蓋がずれたり落ちたりするのを防げます。
旨味が凝縮されている最後の一滴まで、しっかりと注ぎ切りましょう。

ステップ4:清潔な布巾を敷いたお盆に湯呑と茶托をセットする

お茶を淹れ終えたら、運ぶ準備をします。
清潔な布巾を敷いたお盆の上に、茶托と、底を拭いて水気を取った湯呑を別々に乗せます。
布巾を敷くことで、運搬中に食器が滑るのを防ぎ、万が一お茶がこぼれてもお盆が汚れるのを最小限に抑えられます。
応接室に入室し、サイドテーブルなどにお盆を置いた後、お客様にお出しする直前に湯呑を茶托にセットします。
この一連の流れをスムーズに行うことで、衛生的で見た目にも美しい、心のこもったおもてなしが完成します。

【入室から退室まで】スマートなお茶出しの流れを4つの手順で解説

美味しいお茶を準備できたら、次に応接室での振る舞いが重要になります。
入室からお茶を出し、退室するまでの一連の動作は、すべてお客様に見られています。
スマートで洗練された対応は、企業の品格を示すことにもつながります。
お茶を出すタイミングや歩き方、お辞儀の角度まで、細やかな配慮が求められます。
ここで紹介する4つの手順に沿って行動することで、一貫性のある丁寧な印象を与え、お客様に心地よい時間を提供できるでしょう。

手順1:ドアを3回ノックし「失礼します」と挨拶して入室する

応接室に入る際は、まずドアをノックします。ノックの回数は、日本では3回が一般的ですが、国際的なビジネスマナーでは4回が基本とされています。静かに、しかし相手に聞こえる程度の音量で行いましょう。ノックの後、「失礼します」と声をかけ、一呼吸おいてからドアを開けます。中からの返事を待つ必要はありません。入室したら、まずはお客様と中にいる社員の方を向き、軽く会釈をします。この最初のアクションが、丁寧な印象を与えるための第一歩となります。お盆で両手がふさがっているため、深々とお辞儀をする必要はありません。

手順2:下座側のサイドテーブルなどにお盆を一度置く

入室後、すぐにお客様の席へ向かうのではなく、まずはお盆を置くスペースを確保します。
お客様の会話を遮らないよう、入り口に近い下座側のサイドテーブルや、テーブルの空いている場所にお盆を静かに置きましょう。
もしサイドテーブルなどがなければ、テーブルの下座側の端に置きます。
お盆を一度置くことで両手が自由になり、この後の湯呑と茶托をセットする作業がスムーズかつ安全に行えます。
無言で作業を進めるのではなく、会釈をしながら落ち着いて行動することで、相手に安心感を与えられます。

手順3:お客様の右後ろから「どうぞ」と声をかけながらお茶を出す

お盆の上で湯呑を茶托にセットしたら、いよいよお客様にお茶をお出しします。
原則として、お客様の右後ろに回り込み、「どうぞ」または「失礼します」と小さな声で声をかけながら、静かにテーブルに置きます。
お客様の会話の邪魔にならないよう、簡潔な言葉を選ぶのがポイントです。
もし、テーブルの配置や壁などで右側からの提供が難しい場合は、「左から失礼します」と一言添えて左側から出しても問題ありません。
お客様の邪魔にならないよう、常に状況をよく見て柔軟に対応することが求められます。

手順4:最後に一礼して静かにドアを閉めて退室する

すべてのお客様にお茶を出し終えたら、空になったお盆を両手で持ち、退室の準備をします。
このとき、お客様に背中を完全に見せないように、少し斜めの角度を保ちながらドアの方へ移動するのが美しい所作です。
ドアの前まで来たら、お客様の方を向き直し、「失礼いたしました」と言葉を添えて丁寧に一礼します。
その後、ドアを静かに開けて退室します。
最後のドアを閉める瞬間まで気を抜かず、音を立てないようにゆっくりと閉めることで、一連のおもてなしが丁寧な印象で締めくくられます。

来客対応にふさわしいお茶の種類とは?

来客対応でお出しするお茶は、季節や相手を選ばない上品な煎茶が最も一般的で無難な選択です。
しかし、状況に応じて種類を変えることで、より心のこもったおもてなしができます。
例えば、暑い夏の日には冷たい麦茶や緑茶、寒い冬には体を温めるほうじ茶や玄米茶も喜ばれるでしょう。
また、お客様の好みが事前に分かっている場合は、コーヒーや紅茶を用意するのも良い配慮です。
長時間の会議の場合は、カフェインが少ないお茶を選んだり、途中で新しい飲み物に差し替えたりすることも検討すると、きめ細やかな対応として評価されます。

【ケース別】お茶出しで困ったときのスマートな対処法

どれだけ事前準備をしてマナーを学んでいても、実際の職場では予期せぬトラブルが発生することがあります。
机が書類でいっぱいであったり、お客様の人数が想定と違ったりと、マニュアル通りにはいかない場面は少なくありません。
しかし、そんな時こそ冷静でスマートな対応力が試されます。
慌てず、誠実に対応することで、かえってお客様に良い印象を与えることも可能です。
ここでは、お茶出しで遭遇しがちな困ったケースと、そのスマートな対処法を紹介します。

机が書類で埋まっていてお茶を置くスペースがない場合

お客様が広げている書類でテーブルの上にお茶を置くスペースが見当たらない場合、勝手に書類を動かすのは絶対に避けるべきです。
まず、「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」と静かに声をかけ、お茶の到着を知らせます。
そうすれば、多くの場合お客様自身がスペースを作ってくれます。
もしお客様が会話に集中していて気づかないようであれば、少し待ってから再度声をかけるか、自社の上司に目配せして指示を仰ぎましょう。
無理に置こうとせず、お客様の邪魔にならないように配慮し、前から失礼しますと断って置くのが賢明です。

お客様の後ろが狭くて通ることができない場合

応接室のレイアウトによっては、壁や荷物などでお客様の後ろを通るスペースが非常に狭いことがあります。
このような状況で無理に後ろからお茶を出そうとすると、お客様にぶつかったり、お茶をこぼしたりする危険性が高まります。
原則は右後ろからですが、安全を最優先し、無理だと判断した場合は「前から失礼します」あるいは「こちらから失礼します」と必ず一言断りを入れ、お客様の正面や横からお出ししましょう。
丁寧な声かけがあれば、マナー違反にはあたりません。
状況に応じて柔軟に対応する姿勢が重要です。

想定よりお客様の人数が多くお茶の数が足りない場合

準備していたお茶の数よりもお客様の人数が多かった場合は、まず落ち着いて対応することが肝心です。
その場で慌てて一部の人にだけお出しするのは避け、一旦「申し訳ございません。すぐに追加の準備をいたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と丁寧にお詫びと状況を伝えてから退室します。
その後、急いで不足分を用意し、全員に同時にお出しできるようにします。
もし湯呑が足りないなどの場合は、上司に報告し、紙コップで代用しても良いかなどの指示を仰ぎましょう。
正直に状況を伝え、誠実に対応する姿勢が大切です。

お客様からお茶を辞退された場合の対応

お客様から「お気遣いなく」「結構です」とお茶を辞退されることもあります。
その場合は、無理強いしないのがマナーです。
一度は「よろしければどうぞ」と丁寧にお勧めしますが、それでも固辞されるようであれば、「さようでございますか。もしお入り用になりましたら、いつでもお申し付けください」と柔らかく伝え、引き下がります。
しつこく勧めるのは、かえって相手に不快感を与えてしまう可能性があります。
相手の意向を尊重する姿勢を見せることが大切です。
冷たいお水だけでも用意しておくといった配慮も良いでしょう。

万が一お客様の前でお茶をこぼしてしまった場合

もしお茶をこぼしてしまったら、何よりもまず冷静に、そして迅速に行動することが求められます。
最初に「大変申し訳ございません」と深々と頭を下げて、誠心誠意謝罪します。
すぐにお客様の衣服や持ち物にお茶がかかっていないかを確認し、清潔な布巾やハンカチで拭く手伝いを申し出ましょう。
テーブルの上が濡れてしまった場合は、速やかに拭き取ります。
その後、すぐに新しいお茶を淹れ直す旨を伝え、一度退室します。
自分だけで判断せず、速やかに上司に報告し指示を仰ぐことも忘れてはいけません。

まとめ

お茶出しは、来客に対するおもてなしの心を表すための重要なビジネスマナーです。
役職の高いお客様から順番にお出しするという基本ルールから、音を立てずに静かに置くといった細やかな配慮まで、一連の動作にはすべて意味があります。
美味しいお茶の淹れ方や、入室から退室までのスムーズな流れを身につけることで、お客様に心地よい時間を提供できます。
また、書類で机が埋まっている、人数が足りないといった予期せぬ事態にも、冷静かつ誠実に対応する力が求められます。
これらの知識とスキルは、相手を思いやる姿勢の表れであり、企業の印象を向上させることにつながります。

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