
茎茶について詳しく知りたいと考えていませんか。
茎茶とは、煎茶や玉露などを製造する過程で、茶葉の茎や葉脈だけを選り分けて作られたお茶のことです。
一般的な緑茶とは異なる、独特の風味と香りが魅力で「棒茶」や「かりがね」とも呼ばれます。
この記事では、茎茶の基本的な特徴から期待できる効能、ほうじ茶をはじめとする他のお茶との違い、そして美味しい淹れ方まで、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
茎茶とは?茶葉の茎だけを集めたさっぱりとした味わいのお茶
茎茶は、緑茶の一種であり、茶葉の葉の部分ではなく「茎」や「葉脈」を集めて作られます。
煎茶や玉露の製造工程では、荒茶から葉の柔らかい部分と硬い茎の部分をふるい分ける作業があり、その際に取り除かれた茎の部分が茎茶の原料となります。
このため「出物(でもの)」と呼ばれるお茶に分類されます。
茶葉の茎の部分には、渋み成分であるカテキンが少なく、旨味・甘み成分のテアニンが豊富に含まれているのが特徴です。
その結果、味わいは渋みが少なく、さっぱりとした甘みと爽やかな香りを楽しめます。
茎茶ならではの3つの特徴
茎茶には、他の緑茶にはない独特の魅力があります。
その大きな特徴は、味わい、香り、そして見た目の3つの要素に集約されます。
茎の部分を使うことから生まれるこれらの個性は、茎茶ならではの風味を形成し、多くの人々に愛される理由となっています。
一般的な煎茶とは異なる、さっぱりとした飲み口や清々しい香りは、日常のお茶の時間を特別なものにしてくれるでしょう。
ここでは、茎茶が持つ3つの特徴について、それぞれ詳しく見ていきます。
渋みが少なく甘みのある爽やかな味わい
茎茶の最大の魅力は、その独特な味にあります。
お茶の渋みの主成分であるカテキンは葉の部分に多く含まれるため、茎を主原料とする茎茶はカテキンの含有量が少なく、渋みや苦みが抑えられています。
一方で、旨味や甘みの成分であるテアニンは、葉で作られた栄養が茎を通って新芽に送られる過程で茎に多く蓄えられます。
このため、茎茶は口に含むとさっぱりとした爽やかさの中に、しっかりとした甘い風味を感じることができます。
苦みが苦手な方や、お子様でも飲みやすい優しい味わいが特徴です。
後味もすっきりしているため、食事と合わせたり、日常的にごくごく飲んだりするのに適しています。
若葉のような清々しい香り
茎茶は、若葉を思わせるような清々しく爽やかな香りも大きな特徴です。
この独特の香りは「青葉アルコール」や「ピラジン」といった香り成分によるもので、特に茎の部分に多く含まれています。
火入れの工程で生まれる甘く香ばしい香りも加わり、心を落ち着かせるような独特のアロマを生み出します。
この香りはリフレッシュしたい時や、気分を切り替えたい時にぴったりです。
急須にお湯を注いだ瞬間に立ち上る、清涼感のある香りは茎茶ならではの楽しみ方の一つと言えるでしょう。
この爽やかな香りと、後述するテアニンのリラックス効果が相まって、心身ともに安らぎの時間をもたらします。
茶柱が立ちやすい棒状の見た目
茎茶は、その名の通り茶葉が棒状の形をしているのが見た目の大きな特徴です。
これは、お茶の茎や葉脈を選り分けて作られているためです。
この形状から、お茶を淹れた際に「茶柱」が立ちやすいと言われており、古くから縁起が良いお茶としても親しまれてきました。
茶柱が立つと幸運が訪れるという言い伝えは、お茶を楽しむ上でのささやかな楽しみにもなります。
また、お茶を淹れた際の水色(すいしょく)は、淡い黄金色から明るい黄緑色をしており、非常に澄んでいます。
見た目の美しさと、縁起の良さという側面も、茎茶が持つユニークな魅力の一つです。
茎茶の別名「棒茶」「かりがね」との違いを解説
茎茶は、新芽と枝をつなぐ茎の部分から作られる日本茶の一種で、地域や製造方法によって「棒茶」や「かりがね」、または「白折(しらおれ)」など、さまざまな名称で呼ばれることがあります。
一般的に「茎茶」が総称として使われますが、「棒茶」も茎茶の別称の一つです。 特に石川県の加賀地方で作られる「加賀棒茶」は、茎を焙煎して作られるほうじ茶の一種として知られています。 加賀棒茶は、香ばしさとすっきりとした味わいが特徴で、金沢で古くから親しまれてきました。
一方、「かりがね」は、玉露や高級な煎茶の製造過程で選別された茎の部分から作られる茎茶を指すことが多い名称です。 主に京都府を中心とした関西地方でよく使われ、渡り鳥の雁が海上で休息するためにくわえる小枝にその姿が似ていることから名付けられたという説があります。 茎茶は、葉の部分に比べてテアニンなどの旨味成分が豊富で、渋みが少なく、まろやかな甘みが特徴です。
茎茶を飲むことで期待できる3つの効能
茎茶は、その独特の風味だけでなく、私たちの身体に嬉しい様々な効能を持つことでも知られています。
主原料である茎の部分には、茶葉とは少し異なる成分構成の栄養が含まれており、それらが健康や美容に良い効果をもたらします。
例えば、リラックス効果をもたらす成分が豊富であったり、一般的な緑茶に比べてカフェインが少なかったりと、身体に優しい特徴があります。
ここでは、茎茶を飲むことで期待できる代表的な3つの効能について、具体的に解説していきます。
テアニンによる心身を落ち着かせるリラックス効果
茎茶には、アミノ酸の一種であるテアニンという栄養成分が豊富に含まれています。
テアニンは、お茶の旨味や甘みの元となる成分であり、脳に働きかけてリラックス状態を示すα波を増加させる効果があることが分かっています。
このため、茎茶を飲むと、心身の緊張が和らぎ、穏やかな気持ちになることができます。
仕事や勉強の合間の休憩時間や、一日の終わりのリラックスタイムに飲むのに適しています。
テアニンは、睡眠の質を向上させる働きも期待されているため、就寝前の飲み物としてもおすすめです。
ストレスを感じやすい現代人にとって、手軽にリラックス効果を得られる茎茶は心強い味方となるでしょう。
カフェインが少なく身体への負担が軽い
茎茶は一般的な煎茶や玉露と比較してカフェインの含有量が少ないという特徴があります。
カフェインは茶葉の特に若い芽の部分に多く含まれているため茎を主原料とする茎茶ではその量が自然と少なくなります。
具体的には煎茶のカフェイン量が100mlあたり約20mgなのに対し茎茶は約10mgと半分程度の量です。
このためカフェインの覚醒作用や利尿作用が気になる方胃腸への負担を避けたい方でも安心して楽しむことができます。
また小さなお子様や妊娠中授乳中の方就寝前に温かい飲み物を摂りたい場合にも適しています。
身体への刺激が少ない優しいお茶と言えるでしょう。

カテキンやビタミン類による美容・健康効果
茎茶には、渋み成分であるカテキンが葉の部分よりは少ないものの、適度に含まれています。
カテキンには強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去して細胞の老化を防ぐ効果や、血中コレステロールの上昇を抑える働きが期待されます。
また、茎茶には熱に強いビタミンCも豊富に含まれており、肌の健康を保つ効果や免疫力を高める働きがあります。
さらに、抗酸化作用を持つビタミンEや、リラックス効果のあるテアニンとの相乗効果によって、総合的な美容・健康効果が見込めます。
日常的に茎茶を飲むことで、内側から健康で美しい身体作りをサポートしてくれるでしょう。
茎茶とほうじ茶の決定的な違いは焙煎の有無
茎茶とほうじ茶は、見た目が似ていることがあるため混同されやすいですが、製造工程に決定的な違いがあります。
その違いとは「焙煎(ほうじ)」、つまり高温で炒る工程を経ているかどうかです。
茎茶は、煎茶などと同じく蒸して揉んで乾燥させて作られる不発酵茶であり、緑茶本来の爽やかな香りと甘みを持ちます。
一方、ほうじ茶は、煎茶や番茶、そして茎茶などを強火で焙煎して作られます。
この焙煎により、茶葉は褐色に変化し、カフェインが昇華して少なくなり、独特の香ばしい香りが生まれます。
特に、茎の部分を焙煎したものは「茎ほうじ茶」や「加賀棒茶」と呼ばれ、より一層香ばしさが際立ちます。
煎茶や玉露、粉茶との違いも紹介
茎茶は、煎茶や玉露を製造する過程で発生する出物と呼ばれる副産物の一つです。
そのため、原料となる一番茶の品質が、そのまま茎茶の品質に影響します。
高級な玉露から作られた茎茶はかりがねと呼ばれ、特有の旨味と甘みが凝縮されています。
同じく出物には、製造工程で砕けて粉状になった部分を集めた粉茶や、新芽の先の尖った硬い部分を集めた芽茶があります。
粉茶は色が濃く出て、さっぱりとした味わいが特徴で、寿司屋のあがりとしてよく使われます。
芽茶は、旨味成分が凝縮されており、濃厚で力強い味わいを楽しむことができます。
使用する部位の違いが、それぞれのお茶の個性を作り出しています。
茎茶の魅力を引き出す美味しい淹れ方のコツ
茎茶の持つ爽やかな香りと甘みを最大限に楽しむためには、淹れ方に少しこだわるのがおすすめです。
茎茶は渋みが出にくいという特性があるため、比較的簡単に美味しく淹れることができますが、お湯の温度や抽出時間を調整することで、さらにその魅力を引き出すことが可能です。
基本的なお湯出しはもちろん、夏場にはすっきりとした味わいが楽しめる水出しも適しています。
ここでは、誰でも手軽に試せる、茎茶の美味しい淹れ方のコツを2つの方法に分けて紹介します。
基本のお湯出しで甘みと香りを引き立てる方法
茎茶の甘みと香りを楽しむための基本的な淹れ方は、お湯の温度が重要です。
渋み成分のカテキンが溶け出しにくい特徴があるため、一般的な煎茶よりも少し高めの80℃くらいのお湯を使うと、爽やかな香りがより一層引き立ちます。
沸騰した熱湯を一度湯のみに移して少し冷ますことで、適温に調整できます。
急須に茶葉を入れ、お湯を注いだら、30秒から1分程度じっくりと蒸らしましょう。
抽出時間が長すぎると雑味が出る可能性があるため、様子を見ながら調整してください。
最後の一滴まで注ぎ切ることで、お茶の旨味成分を余すことなく味わうことができます。
二煎目も美味しくいただけます。
夏にぴったりな水出しでごくごく飲む方法
暑い季節には、水出しで茎茶を楽しむのがおすすめです。
低い温度でゆっくりと時間をかけて抽出することで、渋みや苦み成分であるカテキンやカフェインの抽出が抑えられ、旨味・甘み成分であるテアニンが豊富に溶け出します。
これにより、お湯出しとはまた違った、まろやかで澄んだ甘みを存分に味わうことができます。
作り方は非常に簡単で、冷茶ポットやお茶パックに茶葉を入れ、水を注いで冷蔵庫で数時間置くだけです。
抽出時間は2〜6時間程度が目安ですが、お好みの濃さに合わせて調整してください。
すっきりとした飲み口で、夏の水分補給にもぴったりです。

茎茶はまずい?美味しくないと感じる原因と対処法
茎茶を飲んで「まずい」と感じてしまう場合、いくつかの原因が考えられます。
一つは、淹れ方が適切でない可能性です。
例えば、抽出時間が長すぎると、茎茶特有の青臭さや雑味が出てしまうことがあります。
この場合は、蒸らし時間を30秒〜1分程度に短くすることで、すっきりとした味わいになります。
また、お湯の温度が高すぎると、わずかに含まれる渋み成分が強く出てしまうこともあります。
熱湯ではなく、80℃程度に冷ましたお湯を使うと、甘みが引き立ちます。
もう一つの原因として、茶葉自体の品質が考えられます。
茎茶は価格帯が広いので、品質によっては好みに合わない場合もあります。
青臭さが苦手な方は、茎を焙煎した香ばしい「茎ほうじ茶」を試してみるのも良いでしょう。
まとめ
茎茶は、煎茶や玉露の製造過程で出る茎の部分を集めたお茶であり、渋みが少なく爽やかな甘みと香りが特徴です。
副産物であるため比較的安い値段で購入しやすい一方、玉露から作られる「かりがね」のように高級品も存在します。
品質によって味わいは大きく異なるため、様々な商品を試してみるのも一興です。
効能も多く、カフェインが少ないため時間帯を問わずに楽しむことができます。
最近では、手軽に購入できる通販サイトも充実しており、好みの茎茶を見つけやすくなっています。
茎茶を日常に取り入れて、その独特の魅力を味わってみてください。







