
世界中で親しまれている飲み物であるお茶には、数多くの種類が存在します。
主なお茶の種類の名前や特徴を比較すると、その多様性に驚くかもしれません。
実は、緑茶や紅茶、烏龍茶といった人気のお茶は、全て「チャノキ」という同じ椿科の木から作られています。
茶葉の加工方法、特に発酵度の違いによって、味や香りが異なる多種多様なお茶が生まれるのです。
この記事では、国ごとの有名なお茶の名前と特徴を分かりやすく解説します。
おすすめの飲み方なども紹介するので、お気に入りのお茶を見つける参考にしてください。
目次
発酵度の違いが味や香りを決める!お茶の基本的な3分類
お茶の味や香、色の違いは、茶葉に含まれる酸化酵素による「発酵」の度合いによって決まります。
この発酵とは、茶葉が持つ酸化酵素の働きを利用した製法のことです。
お茶は大きく、酵素の働きを止める「不発酵茶」、酵素をある程度働かせる「半発酵茶」、完全に働かせる「発酵茶」の3つに分類されます。
これに微生物の力で発酵させる「後発酵茶」や、弱発酵の白茶、弱後発酵の黄茶などを加えた六大分類も存在します。
茶葉の成分であるカテキン(タンニン)や旨味成分のテアニンが、製法の違いによって変化し、緑茶や青茶、紅茶といった個性豊かな風味が生まれます。
【不発酵茶】日本で親しまれている代表的な緑茶の種類
日本人にとって最も一般的で親しまれているお茶が、不発酵茶である緑茶です。
日本の家庭で日常的に飲まれるほか、ペットボトル飲料としてコンビニやスーパーでも手軽に購入できます。
緑茶は、摘み取った茶葉をすぐに加熱処理することで酸化酵素の働きを止め、茶葉の緑色を保つのが特徴です。
そのため、淹れたお茶もきれいな緑色の水色になります。
寿司屋で提供されるあがりのように、食事との相性も抜群です。
同じ緑茶の中でも、栽培方法や作り方、茶葉を摘む時期、淹れるお湯の温度によって多くの種類に分かれ、それぞれ異なるメリットや味わいを楽しめます。

煎茶:さわやかな渋みと旨味のバランスが絶妙
煎茶は、日本で最も生産・消費量が多い代表的な緑茶です。
日光をたっぷりと浴びて育った茶葉を蒸して揉みながら乾燥させる製法で作られます。
この工程により、お茶の旨味成分と適度な渋み成分がバランス良く引き出され、さわやかでキレのある味わいが生まれます。
美味しい淹れ方としては、少し冷ましたお湯を使うと旨味が、熱いお湯を使うと渋みが際立ち、好みに合わせて風味を調整できるのも魅力の一つです。
産地としては静岡県が特に有名で、一口に静岡の煎茶といっても産地や製法によって様々な個性を持つ銘柄が存在します。
玉露:覆い栽培が生んだ格別な旨味と甘み
玉露は、日本の緑茶の中でも最高級品として知られる高級茶です。
最大の特徴は、茶摘みの20日ほど前から茶園に覆いをかけて日光を遮る「覆い栽培」という特殊な栽培方法にあります。
光を制限することで、茶葉の旨味・甘み成分であるテアニンが増加し、渋み成分であるカテキンの生成が抑えられます。
これにより、玉露特有のとろりとした濃厚な旨味と、覆い香(おおいか)と呼ばれる独特の香りが生まれます。
低温のお湯でじっくりと時間をかけて淹れることで、その格別な甘い味わいを最大限に引き出せます。
主な産地は京都の宇治や福岡の八女が有名です。
抹茶:石臼で丁寧に挽いたきめ細やかな粉末茶
抹茶は、玉露と同じく覆い栽培で育てた茶葉を、蒸した後に揉まずに乾燥させて作る「碾茶」を、石臼で丁寧に挽いてきめ細やかな粉末状にしたお茶です。茶道で用いられることで知られ、その歴史は長いです。お湯に溶かして茶葉を丸ごと飲むため、茶葉に含まれる栄養素を効率的に摂取できます。
味わいは、上品な苦い風味の中にしっかりとした旨味と甘みが感じられ、独特のコクがあります。近年では、ラテやスイーツの原料としても世界中で人気を博しており、鮮やかな緑色と豊かな風味が様々な形で楽しまれています。主な産地としては、愛知県西尾市などが挙げられます。愛知県西尾市は全国生産量の約20%を占める日本有数の抹茶の産地です。
番茶:さっぱりとした味わいで日常的に楽しめる
番茶は、夏の終わりから秋にかけて収穫される茶葉や、煎茶の製造過程で選別された大きな葉、硬い葉などを使って作られる緑茶です。
新芽ではなく成長した葉を使うため、カテキンが豊富でカフェインが少なく、さっぱりとした味わいが特徴です。
刺激が少ないため、子供からお年寄りまで安心して飲むことができます。
また、比較的手頃な値段で手に入るため、家庭で飲む日常のお茶として広く親しまれています。
地域によって番茶の定義は異なり、独特の製法で作られる個性的な番茶も存在します。
ほうじ茶:焙煎による香ばしい薫りが魅力
ほうじ茶は、煎茶や番茶、茎茶などを強火で焙煎して作られるお茶です。
この焙煎という工程によって、茶葉は特徴的な茶色に変化し、独特の香ばしい薫りが生まれます。
高温で焙煎することにより、緑茶に含まれるカフェインや渋み成分であるカテキンが減少するため、苦みや渋みが少なく、すっきりと飲みやすい味わいになります。
胃への負担も軽く、就寝前や食事中のお茶としても適しています。
その香ばしい香りはリラックス効果も期待でき、近年ではラテやスイーツなどにも活用され、幅広い世代から人気を集めています。
玄米茶:炒った玄米の香りがアクセントの飲みやすいお茶
玄米茶は、煎茶や番茶といった茶葉に、炒った玄米をほぼ同量混ぜ合わせたお茶です。
最大の特徴は、玄米が持つ独特の香ばしい香りで、緑茶のさわやかさと調和して、すっきりとした飲みやすい味わいを生み出します。
茶葉の割合が少ないため、緑茶に比べてカフェインの量が抑えられているのもポイントです。
玄米の香りが食欲をそそるため、食事のお供にもぴったりです。
商品によっては、玄米だけでなく炒った大豆や黒豆などの豆類をブレンドしたものもあり、さらに香ばしさが加わった風味を楽しめます。
【半発酵茶・後発酵茶など】奥深い中国茶の多様な種類
広大な国土を持つ中国では、地域ごとに気候や文化が異なり、非常に多様なお茶が生産されています。
その奥深い世界は、発酵度の違いによって大きく六種類に分類され、半発酵茶や後発酵茶など、日本の緑茶とは異なる製法で作られるものが多く存在します。
有名な烏龍茶は台湾でも盛んに作られています。
また、微生物の力で発酵させる黒茶は、沖縄やタイでも類似のお茶が見られます。
近年では、日本国内でも佐賀県の嬉野などで中国茶の製法を取り入れた商品が作られるなど、その多様な魅力は韓国やトルコといった国々にも広がっています。

青茶(烏龍茶):華やかな香りと豊かな風味が特徴
青茶は、発酵を途中で止めて作られる半発酵茶のことで、一般的には烏龍茶として知られています。
茶葉を日光に当てて萎れさせた後、室内で揺り動かす工程を繰り返すことで、茶葉の縁から中心に向かって発酵が進みます。
この発酵度の幅が広いため、緑茶に近いすっきりとした味わいのものから、紅茶のような深いコクを持つものまで、非常に多彩な種類が存在するのが魅力です。
特にその香りは個性的で、蘭や金木犀といった花のような甘く華やかな香りがするものも多く、その豊かな風味は多くの人々を魅了します。
産地や品種、製法によって全く異なる個性を楽しめます。
黒茶(プーアール茶):熟成による独特の風味と深いコク
黒茶は、加熱処理した茶葉を麹菌などの微生物の力で発酵させる「後発酵茶」です。
代表的なものに、雲南省を主な産地とするプーアール茶があります。
完成した茶葉を圧縮して固め、長い年月をかけて熟成させることで、独特の土のような香りと、まろやかで深いコクが生まれます。
熟成期間が長いものほど高級品とされ、ヴィンテージワインのように年代による風味の違いを楽しむことができます。
体を温める効果や脂肪の吸収を抑える効果が期待されることから、健康や美容に関心のある層からも人気を集めています。
福建省など他の地域でも、特徴的な黒茶が生産されています。
白茶:わずかな発酵で生まれる繊細で上品な味わい
白茶は、摘み取った茶葉を加熱処理せず、日光や室内でゆっくりと萎れさせながら乾燥させるという、非常にシンプルな製法で作られる弱発酵茶です。
産毛に覆われた新芽を主に用いるため、完成した茶葉が白く見えることからこの名前が付きました。
加工工程が少ないため、茶葉本来の繊細な風味が生かされています。
味わいは、ほのかな甘みと上品で優しい香りが特徴で、非常にデリケートです。
水色は淡い黄金色で、すっきりとした後味を楽しめます。
体を冷やす効果があるとされ、中国では夏の暑い時期によく飲まれるお茶の一つです。
黄茶:特有の製法が生み出すまろやかな口当たり
黄茶は、緑茶の製造工程の途中で「悶黄(もんこう)」と呼ばれる、高温多湿の状態で茶葉を蒸らす独自の工程を加えて作られる弱後発酵茶です。
この悶黄によって茶葉がゆっくりと酸化発酵し、茶葉と水色が黄色みを帯びます。
かつては皇帝への献上茶として扱われていた希少な高級茶です。
味わいは、緑茶の爽やかさを残しつつも、悶黄の工程によって青臭さや渋みが取り除かれ、非常にまろやかで甘みのある口当たりになります。
香りは、炒った豆のような独特の芳しさがあります。
生産量が少なく、中国茶の中でも特に珍しい種類とされています。
【発酵茶】世界中で愛される紅茶の代表的な種類
紅茶は、茶葉を完全発酵させて作られる発酵茶です。
摘み取った茶葉を萎れさせた後、揉んで組織を壊し、酸化酵素を十分に働かせることで、特有の赤い水色と豊かな香りが生まれます。
その華やかな風味は世界中で愛されており、特にイギリスではティータイムの文化が深く根付いています。
主な産地はインド、スリランカ、ケニアなどが有名で、インドネシアやミャンマーなどでも生産されています。
産地の気候や土壌、収穫時期によって茶葉の個性が大きく異なり、それぞれに特徴的な風味を持つ多様な種類の紅茶が楽しまれています。

ダージリン:「紅茶のシャンパン」と称される優雅な香り
ダージリンは、インド北東部のヒマラヤ山麓にあるダージリン地方で生産される紅茶です。
世界三大紅茶の一つに数えられ、その最大の特徴は「マスカテルフレーバー」と称される、マスカットの果実のような甘く爽やかな香りです。
特にクオリティーシーズンと呼ばれる旬の時期に収穫された茶葉は、格別の風味を持ちます。
収穫時期によっても風味が異なり、春摘みは緑茶のようなフレッシュな香り、夏摘みは最もマスカテルフレーバーが強く、秋摘みは熟した果実のような芳醇な味わいになります。
その優雅な香り立ちから「紅茶のシャンパン」とも呼ばれ、ストレートティーで楽しむのに最適です。
アッサム:ミルクティーに最適な濃厚なコクと甘み
アッサムは、世界最大の紅茶産地であるインド北東部のアッサム地方で生産される紅茶です。
低地で栽培されるアッサム種の茶葉から作られ、濃厚で力強いコクと、麦芽のような甘く芳醇な香りが特徴です。
水色は濃い赤褐色で、その豊かな風味はミルクとの相性が非常に良く、ミルクティーやチャイのベースとして世界中で広く使われています。
ストレートで飲むと、その甘みとコクをより深く感じることができます。
CTC製法と呼ばれる、茶葉を細かく丸い粒状に加工する方法で作られることが多く、短時間でしっかりと味と色を抽出できるのも特徴の一つです。
ウバ:メントールのような爽快な香りが特徴
ウバは、スリランカの南東部にあるウバ州の高地で生産される紅茶で、ダージリン、キーマンと並ぶ世界三大紅茶の一つです。
最大の特徴は、クオリティーシーズンである7月から8月にかけて収穫される茶葉が持つ、メントール系の爽快な香りです。
「ウバフレーバー」と呼ばれるこの独特の香りは、バラやスズランのような甘い香りと合わさり、爽やかで刺激的な風味を生み出します。
味わいは、しっかりとした渋みとコクがあり、水色は明るく鮮やかな紅色です。
その爽快な香りはミルクを加えることでより一層引き立ち、ミルクティーとしても人気があります。
キーモン:蘭の花にも例えられる甘くスモーキーな香り
キーモンは、中国の安徽省祁門県で生産される紅茶で、ダージリン、ウバと並び世界三大紅茶の一つとされています。
中国を代表する紅茶であり、「祁門紅茶」とも呼ばれます。
その特徴は、蘭やバラの花に例えられるような甘く優雅な香りと、燻したような独特のスモーキーな香りです。
味わいは、渋みが少なく、ほのかな甘みと果物のような酸味があり、非常にまろやかで飲みやすいです。
水色は明るいオレンジ色で、その上品な風味はストレートティーで楽しむのが最適です。
イギリス王室でも愛飲されていることで知られています。
実は茶葉じゃない?「茶外茶」と呼ばれる飲み物の種類
一般的に「お茶」と呼ばれている飲み物の中には、チャノキの葉を原料としない「茶外茶(ちゃがいちゃ)」という種類があります。
これらは、麦や豆などの穀物、ハーブの葉や花、果実などを煎じたり煮出したりして作られます。
チャノキを原料としないため、その多くはカフェインを含んでいないのが特徴です。
そのため、カフェインを控えたい人や、就寝前のリラックスタイムにも適しています。
それぞれ原料由来の栄養が豊富で、特定の健康効果や効能を期待して飲まれることも多く、古くから民間療法などで利用されてきた歴史を持つものも少なくありません。

麦茶:ノンカフェインで香ばしい夏の定番
麦茶は、焙煎した大麦の種子を煮出して作られる、日本で古くから親しまれている茶外茶です。
夏の定番飲料として知られ、その香ばしい香りとすっきりとした後味は、暑い季節の水分補給に最適です。
原料が大麦であるためカフェインを一切含まず、赤ちゃんからお年寄り、妊娠中の方まで安心して飲むことができます。
また、体を冷やす効果や、汗で失われがちなミネラルを補給できるというメリットもあります。
やかんで煮出すだけでなく、手軽な水出しパックも普及しており、家庭で簡単に作れる身近な飲み物として定着しています。
ルイボスティー:美容と健康で注目される南アフリカのお茶
ルイボスティーは、南アフリカ共和国のセダルバーグ山脈一帯でのみ自生する、マメ科の植物「ルイボス」の葉を発酵・乾燥させて作られるお茶です。
現地では古くから健康飲料として親しまれてきました。
カフェインを含まず、タンニンも少ないため、渋みがなく、ほんのりとした甘みとすっきりとした後味が特徴です。
抗酸化作用を持つとされるポリフェノールが豊富に含まれており、美容や健康に関心が高い層から注目を集めています。
むくみ対策に役立つとされるカリウムも含まれており、24時間いつでも気軽に飲める健康茶として人気が高まっています。
ハーブティー:リラックスタイムに最適な自然の香り
ハーブティーは、様々な植物の花、葉、茎、根、果実などを乾燥させ、お湯で抽出する飲み物の総称です。
原料となるハーブの種類によって香りや味わい、期待される効果が大きく異なります。
例えば、カモミールやラベンダーはリラックス効果が高いことで知られ、就寝前の飲み物として人気です。
ペパーミントは爽快な香りでリフレッシュしたい時に適しています。
その他、とうもろこしのひげから作られるコーン茶など、世界中には多種多様なハーブティーが存在します。
自然由来の豊かな香りと優しい味わいは、心と体を癒やすリラックスタイムに最適です。
まとめ
お茶は、緑茶、紅茶、烏龍茶など様々な種類がありますが、その多くが「チャノキ」という一つの植物の葉から作られています。
製造工程における発酵度の違いが、色、味、香りの多様性を生み出しているのです。
不発酵の緑茶は爽やかな味わい、半発酵の青茶(烏龍茶)は華やかな香り、完全発酵の紅茶は深いコクが特徴です。
さらに、微生物によって発酵させる黒茶なども存在します。
また、チャノキ以外の植物から作られる麦茶やルイボスティーなどの「茶外茶」も含めると、お茶の世界は非常に広大です。
それぞれの種類の特徴を知ることで、気分やシーンに合わせてお茶を選ぶ楽しみが広がります。







