
旬のお茶を最も美味しく味わえる時期はいつなのか、気になったことはありませんか。
日本で栽培されるお茶の旬、特にその年の最初に収穫される新茶の時期は春が本番です。
しかし、お茶の楽しみ方は季節によってさまざまで、収穫のタイミングや加工方法によっても味わいは大きく異なります。
この記事では、お茶の旬がいつなのか、その魅力や季節ごとの楽しみ方について詳しく解説します。
目次
お茶の旬は春!4月下旬から5月が最も美味しいシーズン
お茶の旬として最も知られているのは春の季節です。
具体的には、4月下旬から5月にかけて収穫される「新茶」のシーズンが、一年で最もお茶が美味しい時期とされています。
この時期に摘み取られる茶葉は、冬の間に蓄えた栄養を豊富に含んでおり、爽やかな香りと豊かな旨みが特徴です。
全国の茶産地で一斉に茶摘みが始まり、市場には摘みたての新鮮なお茶が並びます。
なぜ旬のお茶は特別なの?風味豊かな味わいの秘密
旬のお茶が特別に美味しいのには、明確な理由があります。
茶の木は冬の間、厳しい寒さに耐えながら地中から栄養分をじっくりと吸収し、その力を葉に蓄えて休眠します。
そうして春の訪れとともに暖かくなると、一斉に新芽を芽吹かせます。
この最初に芽吹いた茶の葉には、冬の間に蓄えられた旨味や甘み成分が凝縮されているため、格別な風味と香りを持つお茶になるのです。
「新茶」と「一番茶」は同じもの?それぞれの言葉の意味を解説
新茶と一番茶は、どちらも春に摘まれるお茶を指し、基本的には同じお茶を異なる呼び方で表現しています。新茶は、その年に最初に生育した新芽を摘んで作られるお茶の総称です。私たちが普段飲む緑茶や煎茶の多くは、この一番茶から作られています。
新茶は初物としての意味合いが強く、一番茶の中でも特に早い時期、4月から5月に出回るものを指すのが通例です。 特に八十八夜の頃に摘まれたお茶が有名で、季節の便りとして珍重されます。 つまり、新茶は「いつ摘まれたか」という時期に注目した呼び方で、一番茶は「何番目に摘まれたか」に注目した呼び方と捉えると分かりやすいです。
冬の間に蓄えた栄養が凝縮された豊かな旨味
新茶の最大の魅力は、冬の間に茶の木が根に蓄えた栄養分が凝縮されている点にあります。
寒い冬を越すために蓄えられたアミノ酸の一種であるテアニンは、お茶の旨味や甘みの主成分です。
春になり芽吹いたばかりの若い芽には、このテアニンが豊富に含まれています。
日光を浴びる時間が長くなると、テアニンは渋み成分のカテキンへと変化しますが、若芽のうちに摘み取られる新茶はカテキンが少なく、テアニンの豊かな旨味と甘みを存分に味わえます。
特に、新芽の先端部分だけを集めた芽茶は、この凝縮された旨味をより強く感じることができる贅沢なお茶です。
一番茶・二番茶・三番茶で異なる味わいの特徴
お茶は収穫時期によって一番茶、二番茶、三番茶と呼ばれ、それぞれ味わいが異なります。
一番茶(新茶)は、旨味成分テアニンが豊富で、渋みが少なく、まろやかで甘みが強いのが特徴です。
高級な抹茶の原料となる碾茶も、一番茶が主に使われます。
一番茶の収穫から約45~50日後に摘まれる二番茶は、一番茶に比べて日光を多く浴びるため、カテキンが増えて爽やかな渋みとさっぱりとした味わいが楽しめます。
夏に近い時期に収穫される三番茶は、さらにカテキンの含有量が多く、すっきりとした味わいが特徴的です。
このため、ほうじ茶や番茶などの原料として加工されることが多く、日常的に飲むお茶として親しまれています。
新茶の旬はいつからいつまで?地域によっても時期が変わる
新茶の旬は全国一律ではなく、産地の気候によって収穫時期が異なります。
日本列島は南北に長いため、温暖な地域から順に茶摘みが始まっていきます。
一般的に、九州の南部から始まり、次第に四国、そして日本有数のお茶の産地である静岡県へと移り、最終的に北の産地へと収穫の時期が北上していきます。
そのため、「新茶の旬はいつから」という問いに対しては、産地によって答えが変わってくるのが実情です。
お茶の旬を知る目安「八十八夜」とは
お茶の旬を知る上で重要なのが「八十八夜」という言葉です。
これは、春の始まりを示す立春から数えて88日目にあたる日のことで、暦の上では5月2日頃になります。
この時期は、遅霜の心配が少なくなり、気候が安定してくるため、茶摘みを始めるのに最適なタイミングとされてきました。
「八十八夜に摘まれたお茶を飲むと、一年間無病息災で過ごせる」という言い伝えもあり、古くから縁起の良いものとして珍重されています。
現在でも、多くのお茶の産地でこの八十八夜を基準に茶摘みの最盛期を迎えるため、新茶の旬を知るための大切な目安となっています。
南から北上する「新茶前線」で収穫時期を知ろう
桜前線のように、お茶の収穫時期も南から北へと移っていくことから「新茶前線」と呼ばれています。
この前線の動きを知ることで、各産地の新茶の旬を予測できます。
日本で最も早く新茶の収穫が始まるのは、温暖な気候の鹿児島県種子島で、3月下旬頃には茶摘みが始まります。
その後、4月上旬には宮崎県の宮崎市や新富町などで収穫が本格化し、前線は北上を続けます。
静岡県では4月中旬から下旬、京都の宇治では5月上旬、そして関東の狭山や北部の産地では5月中旬以降に収穫のピークを迎えるのが一般的です。
新茶として楽しめるのは6月頃までが一般的
摘みたてのフレッシュな味わいが魅力の新茶ですが、市場に出回る期間は限られています。
最も早い産地では3月下旬から収穫が始まりますが、全国の産地から新茶が出揃い、最も活気づくのは4月下旬から5月いっぱいです。
一般的に「新茶」として販売されるのは6月頃までで、それ以降、お茶は「一番茶」として通年販売される商品へと切り替わっていきます。
ただし、近年は製茶技術や保存技術が向上したため、旬の時期に加工されたお茶の品質を長期間保つことが可能になりました。
そのため、夏以降でも美味しい一番茶を楽しむことができますが、「新茶」ならではの若々しい香りと味わいを堪能するなら、やはりこの時期が最適です。
旬の今だからこそ味わいたい!新茶の美味しい楽しみ方
旬の新茶を手に入れたら、その美味しさを最大限に引き出す淹れ方で味わいたいものです。
新茶は旨味成分のテアニンを豊富に含み、渋み成分のカテキンが少ないという特徴があります。
この特徴を活かすには、お湯の温度が重要なポイントになります。
少し手間をかけるだけで、新茶ならではの爽やかな香りと豊かな甘みを存分に楽しむことが可能です。
また、上品な甘さの和菓子と合わせることで、より豊かなお茶の時間を過ごせます。

ぬるめのお湯で淹れて甘みと旨味をじっくり引き出す
新茶の甘みと旨味をじっくり引き出す秘訣は、お湯の温度にあります。
お茶の旨味成分であるテアニンは比較的低い温度でも抽出されますが、渋み成分のカテキンは高い温度で溶け出しやすい性質を持っています。
そのため、沸騰したお湯をそのまま使うのではなく、一度湯呑みに注いで70〜80℃程度まで冷ました「湯冷まし」を使うのがおすすめです。
少しぬるめのお湯で淹れることで、カテキンの抽出を抑え、新茶特有のまろやかな甘みと豊かな旨味を最大限に引き出すことができます。
急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯を注いだら、1分ほどじっくりと蒸らしてから最後の1滴まで注ぎ切るようにしてください。
爽やかな若葉の香りとフレッシュな味わいを堪能する
新茶のもう一つの大きな魅力は、まるで若葉そのものを思わせるような爽やかで清々しい香りです。
この香りは「青葉アルコール」と呼ばれる成分によるもので、摘みたての新鮮な茶葉に特に多く含まれています。
このフレッシュな香りは、淹れたてのお茶から立ち上る湯気とともに広がり、心をリラックスさせてくれます。
味わいも同様に、雑味がなくすっきりとしており、口の中に広がる清涼感が特徴です。
一煎目では凝縮された旨味と香りを楽しみ、二煎目では少しお湯の温度を上げて淹れることで、爽やかな渋みも加わったキレのある味わいへの変化も堪能できます。
旬の時期にしか体験できない、この特別な香りと味わいを五感でじっくりと感じてみてください。
水出しで楽しむすっきりとした新茶もおすすめ
新茶はお湯で淹れるだけでなく水出しで楽しむのもおすすめです。
水でじっくりと時間をかけて抽出することで高温で溶け出しやすい渋み成分のカテキンや苦味成分のカフェインの抽出が抑えられます。
その結果旨味と甘みの成分であるテアニンが際立ち驚くほどまろやかですっきりとした味わいの緑茶になります。
作り方は非常に簡単でポットに茶葉と水を入れ冷蔵庫で数時間置いておくだけです。
特に上質な煎茶を水出しにするとまるで玉露のような濃厚な旨味を感じることもできます。
暖かい季節には爽やかな香りと優しい甘みが楽しめる水出し新茶が喉の渇きを潤すのに最適です。
まとめ
お茶の旬は、冬の間に栄養を蓄えた新芽が一斉に芽吹く春、特に4月下旬から5月にかけてです。
この時期に摘まれる新茶(一番茶)は、豊かな旨味と爽やかな香りが特徴で、格別な味わいを楽しめます。
収穫時期が進むにつれて二番茶、三番茶となり、渋みが増してさっぱりとした味わいに変化し、ほうじ茶などの原料にもなります。
また、一番茶から作られる抹茶のように、異なる製法で楽しむお茶もあります。
新茶を味わう際は、ぬるめのお湯で淹れると甘みが引き立ち、水出しにするとすっきりとした旨味を堪能できます。
旬のお茶の特性を知り、淹れ方を工夫することで、その魅力をより深く感じることができるでしょう。











