コラム

番茶とほうじ茶の違いとは?京番茶との関係や成分・味の違いを解説

2025.9.25

番茶とほうじ茶は、どちらも日常的によく飲まれる日本茶ですが、その違いを正確に説明できる人は少ないかもしれません。
この二つのお茶の最大の違いは「焙煎」という加熱工程の有無にあり、それが原料や味、香り、成分に大きな差を生み出しています。
この記事では、番茶とほうじ茶の違いについて、製造工程から京番茶との関係、そしてシーン別の選び方まで、多角的に詳しく解説します。

番茶とほうじ茶の最大の違いは「焙煎」しているかどうか

番茶とほうじ茶を区別する最も重要なポイントは、茶葉を焙煎しているかどうかという点です。
番茶は、収穫した茶葉を蒸して揉み、乾燥させて作られる「緑茶」の一種であり、加熱処理は酸化を止めるための「蒸し」が基本となります。
一方、ほうじ茶は、そのようにして作られた番茶や煎茶などを、さらに専用の焙煎機で高温で炒る「焙煎」という工程を経て作られます。
この焙煎によって茶葉は褐色に変化し、特有の香ばしい香りが生まれます。
つまり、ほうじ茶は緑茶を加工して作られるお茶であり、焙煎工程の有無が両者の香りや味、水色、成分を決定づける根本的な違いとなっています。

「番茶」とは収穫時期の遅い茶葉を使った緑茶のこと

番茶とは、一般的に新芽を摘んで作られる一番茶や二番茶の後に収穫される、成長して硬くなった茶葉や茎を使って作られる緑茶を指します。
「番外のお茶」という意味合いを持ち、地域によって定義は多少異なりますが、主に夏以降に収穫される三番茶、四番茶や、秋から冬にかけて収穫される秋冬番茶が原料となります。
成長した茶葉はカテキンやカフェインの含有量が新芽に比べて少ないため、苦みや渋みが抑えられ、さっぱりとした飲みやすい味わいが特徴です。
日本各地で生産されており、東北や北海道など冷涼な地域では、その土地ならではの製法で作られた番茶も存在します。

「ほうじ茶」とは番茶などを焙煎して作られるお茶

ほうじ茶とは、番茶や煎茶、茎茶などの緑茶を、強い火で焙煎(ほうじる)して作られたお茶のことです。
茶葉を高温で加熱することで、緑茶特有の苦みや渋みの成分であるカフェインやカテキンが昇華(減少)し、口当たりがまろやかになります。
また、加熱によって「ピラジン」という香り成分が生成され、ほうじ茶ならではの香ばしい、リラックス効果のある香りが生まれるのが最大の特徴です。
茶葉の色は茶褐色で、淹れたお茶の色(水色)は透き通った赤褐色をしています。
カフェインが少ないため、胃への負担も少なく、子どもからお年寄りまで、時間を問わずに楽しめるお茶として広く親しまれています。

番茶とほうじ茶の5つの違いを徹底比較

番茶とほうじ茶の根本的な違いは「焙煎」の有無にありますが、その違いは具体的にどのような特徴として現れるのでしょうか。
ここでは、「製造工程」「原料」「味と香り」「見た目」「含まれる成分」という5つの観点から、両者の違いを詳しく比較し、それぞれの個性を明らかにしていきます。
この比較を通じて、なぜ味や香りが異なるのか、どちらがどのようなシーンに適しているのかがより深く理解できるでしょう。

製造工程の違い:高温で焙煎する工程の有無

番茶とほうじ茶の製造工程における最も大きな違いは、最終段階での焙煎工程の有無です。
番茶は、摘み取った茶葉の酸化酵素の働きを止めるために蒸し、その後、揉みながら乾燥させるという、一般的な緑茶の製法で作られます。
この工程により、茶葉の緑色と爽やかな風味が保たれます。
一方、ほうじ茶は、こうしてできあがった番茶などの緑茶を、さらに焙煎機に入れて高温で加熱します。
この「焙煎」という追加の工程によって、茶葉の成分が化学変化を起こし、特有の香ばしい香りを放ち、茶褐色に変化します。
つまり、ほうじ茶は緑茶に「焙煎」というひと手間を加えたお茶なのです。

原料となる茶葉の違い:ほうじ茶には番茶以外の茶葉も使われる

番茶の原料は、その名の通り、夏以降に収穫される三番茶や四番茶といった、生育の進んだ硬めの茶葉が主に使用されます。
これにより、さっぱりとした日常向けの味わいが生まれます。
それに対して、ほうじ茶の原料は番茶が一般的ですが、必ずしもそれに限定されません。
例えば、新芽を使った上質な煎茶を焙煎することもあり、この場合はより甘みや旨味の強い、上品な味わいのほうじ茶になります。
また、お茶の茎の部分を集めた「茎茶(棒茶)」を焙煎したものは「ほうじ茎茶」や「加賀棒茶」として知られ、独特の香ばしさとすっきりした甘みが特徴です。
このように、ほうじ茶は使用する原料の選択肢が広いという点も違いの一つです。

味と香りの違い:さっぱりした番茶と香ばしいほうじ茶

味と香りにおいても、両者には明確な違いがあります。
番茶は、緑茶の一種であるため、爽やかな香りとさっぱりとした味わいが特徴です。
成長した茶葉を使うことで、上級な煎茶に比べて苦みや渋みは穏やかで、ゴクゴクと飲めるような軽やかさを持っています。
一方、ほうじ茶の最大の魅力は、焙煎によって生まれる芳ばしい香りです。
この香りはリラックス効果をもたらすとも言われています。
味の面では、焙煎により苦み成分のカフェインや渋み成分のカテキンが減少するため、刺激が少なく非常にまろやかです。
甘く、すっきりとした後味で、口の中に香ばしい余韻が残ります。

見た目の違い:茶葉やお茶の色(水色)を比較

番茶とほうじ茶は、見た目にもはっきりとした違いがあります。
まず茶葉を見ると、番茶は緑茶の一種なので、乾燥した状態でも緑色や黄緑色をしています。
茶葉の形状は、原料となる茶葉が大きいため、比較的大きめで不揃いなことが多いです。
淹れたお茶の色も、黄色がかった明るい緑色をしています。
対照的に、ほうじ茶の茶葉は焙煎されているため、こげ茶色や茶褐色です。
淹れたお茶の色は、透明感のある美しい赤茶色や琥珀色になります。
この色の違いは、焙煎による加熱で茶葉に含まれるアミノ酸と糖が反応するメイラード反応などによるもので、ほうじ茶の特性を視覚的にも示しています。

含まれる成分の違い:カフェインやカテキンの含有量

お茶に含まれる成分にも違いが見られます。
番茶は、新芽ではなく成長した葉から作られるため、高級な煎茶と比較すると、もともとカフェインやカテキンの含有量は少なめです。
一方、ほうじ茶は、原料となる番茶などをさらに高温で焙煎する過程で、カフェインやカテキンの一部が昇華(気化して減少)します。
そのため、一般的な緑茶の中でもほうじ茶のカフェイン含有量は特に少なく、体にやさしいお茶として知られています。
このカフェインの少なさから、小さなお子様や妊娠中の方、就寝前など、カフェインを控えたい場面でも安心して楽しめます。
カテキンが減少することで渋みが抑えられるという効能もあり、飲みやすさにつながっています。

「京番茶」は名前に”番茶”とつくがほうじ茶の仲間

京番茶という名称から番茶の一種だと思われがちですが、製法上はほうじ茶の仲間に分類されるお茶です。
京都で日常的に飲まれているこのお茶は、一般的なほうじ茶とは異なる独特の製法で作られます。
春に収穫した一番茶の硬い葉や茎を、蒸した後に揉まずにそのまま乾燥させ、その後、大きな鉄釜で強火で炒り上げます。
この揉まずに炒るという製法が、まるで落ち葉を燻したような、スモーキーで独特な香りを生み出します。
見た目も黒く大きな葉が特徴で、いり番茶とも呼ばれます。
このように、京番茶は番茶という名前を持ちながらも、焙煎という工程を経ているため、香ばしさを特徴とするほうじ茶の一種として位置づけられます。

シーン別!番茶とほうじ茶のおすすめの選び方

番茶のさっぱりとした味わいと、ほうじ茶の香ばしい香り。
それぞれの特徴を理解すると、飲むシーンや気分に合わせてお茶を選ぶ楽しみが生まれます。
例えば、食事の味を引き立てたい時や、日中の水分補給には番茶が適しています。
一方で、一日の終わりにリラックスしたい時や、体を温めたい時にはほうじ茶がぴったりです。
ここでは、具体的な生活シーンを想定し、どちらのお茶を選ぶとより心地よい時間を過ごせるか、おすすめの選び方を紹介します。

食事のお供にはさっぱりした味わいの番茶がおすすめ

番茶のすっきりとしてクセのない味わいは、料理の風味を邪魔しないため、毎日の食事のお供に最適です。
緑茶らしい清涼感を持ちながらも、苦みや渋みが穏やかなので、和食はもちろん、油分が多い洋食や中華料理ともよく合います。
特に脂っこい食事の後に飲むと、口の中をさっぱりと洗い流してくれます。
主張しすぎない味わいは、素材の味を大切にする繊細な和食との相性も抜群です。
日常の食中茶として、また、喉が渇いた時の水分補給として、気軽にたっぷりと楽しめるのが番茶の魅力です。
飽きのこない味わいは、家庭の食卓に常備しておくお茶として非常に優れています。

リラックスしたい時や就寝前には香ばしいほうじ茶を

ほうじ茶の香ばしい香りには、リラックス効果があると言われる「ピラジン」という成分が含まれています。そのため、仕事や家事の合間に一息つきたい時や、一日の終わりに心と体を落ち着かせたい時に飲むのがおすすめです。温かいほうじ茶の香りをゆっくりと吸い込むことで、緊張がほぐれていくのを感じられます。

また、ほうじ茶は、煎茶やウーロン茶と同程度のカフェインを含んでいます。コーヒーや紅茶に比べるとカフェインは少ないですが、麦茶などのノンカフェイン飲料とは異なります。カフェインが気になる場合は、カフェインレスのほうじ茶を選ぶことや、飲む時間帯や量に注意することが推奨されます。

ほうじ茶には体を温める作用も期待できるため、就寝前のリラックスタイムや、体が冷えている時に飲むお茶としても良いでしょう。香りを楽しみながら、穏やかな時間を過ごしたい時に選びたいお茶です。

まとめ

番茶とほうじ茶は、原料が同じ緑茶であっても、「焙煎」という工程の有無によって全く異なる個性を持つお茶です。
番茶は収穫時期の遅い茶葉から作られる緑茶で、さっぱりとした味わいが日々の食事によく合います。
一方、ほうじ茶は番茶などを焙煎して作られ、その香ばしい香りとカフェインの少なさからリラックスしたい時や就寝前に適しています。
この製造工程の違いが、味、香り、水色、成分など、両者のあらゆる特徴を生み出す源泉となっています。
また、「京番茶」のように名前に番茶とついても製法的にはほうじ茶の仲間という例も存在します。
それぞれの特性を理解し、その時々の気分やシーンに合わせて選び分けることで、日本茶の奥深い世界をより楽しむことができるでしょう。

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