コラム

玉露とはどんなお茶?高級茶ならではの旨味と特徴をやさしく解説

2025.9.29

玉露とは、日本茶の中でも最高級品に位置づけられるお茶の一種です。
最大の特徴は、収穫前に日光を遮って育てることで生まれる、濃厚な旨味と甘みにあります。
この特別な栽培方法が、玉露の奥深い味わいと「覆い香」と呼ばれる独特の香りを生み出します。
この記事では、高級茶である玉露の特徴や、煎茶との違い、そして家庭でその美味しさを最大限に引き出す淹れ方まで、初心者にも分かりやすく解説します。

そもそも玉露とは?日光を遮って栽培される特別な緑茶

玉露とは、日本茶を代表する緑茶の一種で、その栽培方法に大きな特徴があります。
一般的な煎茶が栽培中に日光をたくさん浴びて育つのに対し、玉露は収穫前の約20日間、わらや寒冷紗などで茶園を覆い、直射日光を遮って新芽を育てます。
この手間のかかる栽培方法によって、お茶の旨味成分であるアミノ酸(テアニン)が増加し、渋み成分(カテキン)の生成が抑えられます。
その結果、他のお茶にはない、とろりとした濃厚な旨味と甘みを持つ、特別な味わいのお茶が生まれるのです。

玉露が「高級茶」と称される理由はその栽培方法にある

玉露が高級茶として扱われる主な理由は、その特殊で手間のかかる栽培方法にあります。
収穫前に日光を遮る「被覆栽培」は、資材の準備や設置、管理に多くの労力を要します。
また、日光を制限することで茶葉の成長が緩やかになり、収穫量も限られてしまいます。
このように、時間と労力をかけて丁寧に育てられる希少性の高さが、玉露を高級たらしめる要因となっています。
まさに、生産者の丹精が込められた贅沢な一杯と言えるでしょう。

収穫前に日光を遮る「被覆栽培」という手間のかかる育て方

玉露の栽培で最も特徴的なのが「被覆栽培」です。
これは、新芽が出始めてから収穫するまでの約20日間、茶園全体を覆い、日光を遮る栽培方法を指します。
伝統的には「よしず棚」にわらを重ねていく方法がとられますが、近年では黒い化学繊維の布(寒冷紗)で覆うのが一般的です。
この被覆によって、茶葉に当たる光の量を調整します。
日光を遮ることで、茶葉内部の成分が変化し、玉露特有の品質が生まれます。
この「かぶせ」と呼ばれる作業は、非常に手間がかかり、熟練の技術を必要とするため、玉露が高価になる一因となっています。

日光を制限することで生まれる濃厚な旨味と甘み

日光を制限する被覆栽培は、玉露の独特な味を生み出す上で最も重要な工程です。
植物は光合成によって、旨味成分であるテアニンを渋み成分のカテキンへと変化させます。
しかし、日光を遮ることで光合成が抑制され、テアニンがカテキンに変化することなく茶葉の中に豊富に蓄積されます。
その結果、渋みが少なく、濃厚な旨味と甘みが際立った味わいになるのです。
この凝縮された旨味こそが玉露のいいところであり、まるで上質な出汁を思わせるような、深くまろやかな味の源泉となっています。

玉露が持つ独特な味わいと香りの正体

玉露の魅力は、その独特な味わいと香りに集約されます。
手間のかかる被覆栽培によって、お茶の成分が変化し、他の緑茶とは一線を画す個性が生まれます。
特に「覆い香」と呼ばれる特有の香りと、渋みが少なく濃厚な旨味は、玉露ならではのものです。
ここでは、多くの人々を魅了する玉露の味わいと香りが、どのようにして生まれるのか、その正体に迫ります。
一度味わうと忘れられない、その奥深い世界の秘密を解き明かしていきましょう。

「覆い香(おおいか)」と呼ばれる青のりのような豊かな香り

玉露を淹れたときに立ち上る、青のりや海苔、あるいは出汁にも似た独特の香りは「覆い香(おおいか)」と呼ばれます。
この香りは、被覆栽培によって日光が遮られた環境で茶葉が育つ過程で生まれる、玉露ならではの天然の香りです。
主要な香り成分は「ジメチルスルフィド」という物質で、加工工程で熱を加えられることで発生します。
この覆い香は、玉露の品質を測る上でも重要な要素とされており、深く、心地よい香りがするほど上質な玉露であると評価されます。
リラックス効果もあるこの豊かな香りは、玉露の味わいを一層引き立てる大切な要素です。

渋みが少なくまろやかで、深いコクを感じられる

玉露の味わいは、渋みが非常に少なく、まろやかで深いコクがあるのが特徴です。
これは、旨味成分のテアニンが豊富な一方で、渋み成分のカテキンの生成が抑えられているためです。
口に含むと、とろりとした舌触りと共に、上質な出汁のような凝縮された旨味が広がります。
その味わいは、同じく被覆栽培で育てられた茶葉を原料とする抹茶にも通じるものがあります。
甘く、深く、そして長い余韻を楽しめるこの味わいは、他の緑茶では体験できない玉露だけの特別な魅力であり、時間をかけてじっくりと堪能したくなるものです。

煎茶やかぶせ茶と玉露は何が違うの?

玉露の他に、日本茶には煎茶やかぶせ茶といった種類があります。
これらは見た目が似ていることもあり、違いが分かりにくいと感じるかもしれません。
しかし、栽培方法に明確な違いがあり、それが味わいや香りの個性となって現れます。
特に、日光を遮る「被覆栽培」を行うかどうか、またその期間の長さが、それぞれの茶の種類を決定づける重要なポイントになります。
この違いを理解することで、より深く日本茶の世界を楽しむことができるでしょう。

茶葉を覆って光を遮る期間の長さが大きな違い

玉露、かぶせ茶、煎茶の最も大きな違いは、栽培工程における被覆期間の長さにあります。
玉露は、収穫前約20日以上という長い期間、茶園を覆って日光を遮ります。
一方、かぶせ茶も同様に被覆を行いますが、その期間は収穫前の約1週間から10日程度と玉露より短めです。
そして、最も一般的な緑茶である煎茶は、収穫まで日光をたっぷりと浴びさせて育てるため、基本的に被覆は行いません。
この「かぶせ」を行う期間の長さが、それぞれのお茶の成分や風味を決定づける根本的な違いとなっています。

茶葉の育ち方が変わることで味わいや香りも異なる

被覆期間の違いは、茶葉の成分に直接影響し、それぞれの味や香りの個性を生み出します。
最も長く日光を遮る玉露は、旨味成分テアニンが豊富で、渋み成分カテキンが少ないため、濃厚な旨味と甘み、そして特有の覆い香が生まれます。
煎茶は日光を浴びて育つため、カテキンが豊富で、爽やかな香りと心地よい渋みが特徴です。
その中間に位置するのがかぶせ茶で、玉露のようなまろやかな旨味と、煎茶のような爽やかさを併せ持った、バランスの取れた味となります。
栽培方法の違いが、これほど明確な風味の差となって現れるのです。

玉露に含まれる特徴的な成分

玉露の独特な味わいや香りは、茶葉に含まれる特徴的な成分によって生み出されています。
特に、被覆栽培という特殊な育て方によって、他の緑茶とは成分のバランスが大きく異なります。
玉露の美味しさの源である旨味成分や、心身に与える影響など、その魅力を科学的な視点から見ていきましょう。
玉露ならではの成分を知ることで、その一杯がもたらす豊かな時間への理解がより深まります。

リラックス効果が期待できるアミノ酸「テアニン」が豊富

玉露の最大のいいところは、旨味成分であるアミノ酸の一種「テアニン」が非常に豊富に含まれている点です。
テアニンは、玉露のとろりとした甘みと濃厚な旨味の主成分であり、脳内でアルファ波を増加させる働きがあることが知られています。
アルファ波は心身がリラックスした状態の時に現れる脳波であるため、玉露を飲むことで、心を落ち着かせたり、緊張を和らげたりする効果が期待できます。
日光を遮る栽培方法によって、このテアニンが分解されずに茶葉にたっぷりと蓄積されるため、玉露は他の緑茶に比べて特に多くのテアニンを含有しています。

カフェインの働きを穏やかにするテアニンの効果

玉露は緑茶の中でもカフェインの含有量が多いお茶です。
カフェインには眠気を覚ましたり集中力を高めたりする覚醒作用がありますが、一方で過剰に摂取すると神経が過敏になることもあります。
しかし玉露にはカフェインの興奮作用を抑制し穏やかにする働きを持つテアニンも豊富に含まれています。
このテアニンとカフェインが同時に作用することでカフェインのデメリットが緩和され、集中力は高まりつつも心は落ち着いた状態を保つことができます。
この絶妙な成分バランスが、玉露ならではの穏やかで澄んだ覚醒感をもたらすのです。

自宅でできる!玉露の旨味を最大限に引き出す淹れ方の手順

高級茶である玉露は、その淹れ方一つで味わいが大きく変わります。
せっかくの玉露も、淹れ方を間違えると本来の美味しさを十分に楽しむことができません。
しかし、いくつかのポイントを押さえれば、自宅でも簡単にお店で味わうような本格的な玉露を淹れることが可能です。
ここでは、玉露の持つ濃厚な旨味と甘みを最大限に引き出すための、基本的なお茶の淹れ方の手順を分かりやすく紹介します。

ポイントは低温のお湯でじっくりと時間をかけること

玉露の旨味を最大限に引き出すポイントは、50~60℃という低温のお湯で、2分から2分半ほどかけてじっくりと抽出することです。
高温のお湯で淹れると、旨味成分よりも渋みや苦味の成分であるカテキンやカフェインが多く抽出されてしまい、せっかくの玉露の繊細な味が損なわれます。
お湯を一度湯呑みに注いで冷ます「湯冷まし」を行うと、簡単に適温に調整できます。
また、茶葉は少し多めに使い、最後の一滴まで絞り切るように注ぐのが、凝縮された旨味を逃さないコツです。
この一滴には旨味が凝縮されています。

二煎目以降は少しずつ温度を上げて味の変化を楽しもう

玉露は一煎目だけでなく、二煎目、三煎目と淹れるたびに異なる味の表情を楽しむことができます。
一煎目で濃厚な旨味を堪能した後の二煎目は、少し温度を上げた70℃前後のお湯を使い、抽出時間も30秒程度と短くします。
これにより、一煎目とは違った爽やかな香りと、ほのかな渋みが引き出されます。
三煎目はさらに温度を上げて80℃程度で淹れると、煎茶に近いすっきりとした味わいを楽しめます。
このように、お湯の温度を段階的に上げていくことで、一杯の茶葉から様々な味の変化を最後まで味わい尽くすことが可能です。

夏におすすめ!すっきり味わう水出し玉露の作り方

暑い季節には、水出しで淹れるのもおすすめです。
水でじっくりと時間をかけて抽出する方法は、玉露の魅力を引き出すのに非常に適しています。
低温である水で淹れると、渋みや苦味の原因となるカテキンやカフェインの抽出が抑えられ、旨味成分であるテアニンが豊富に溶け出します。
その結果、渋みがなく、玉露本来の甘くまろやかな味をより一層クリアに楽しめます。
作り方は簡単で、ポットに茶葉と水を入れ、冷蔵庫で数時間置いておくだけです。
すっきりとした後味は、夏の喉を潤すのに最適です。

玉露の三大産地として知られる京都・福岡・静岡

日本国内で玉露は様々な地域で生産されていますが、中でも特に品質が高く、生産量も多いことで知られるのが「三大産地」です。
その地とは、歴史と伝統を誇る京都府の宇治、濃厚な味わいで評価の高い福岡県の八女、そして爽やかな香りが特徴の静岡県の朝比奈(岡部町)を指します。
これらの地域は、それぞれ気候や土壌、栽培技術に独自の特徴があり、そこで作られる玉露もまた、個性豊かな風味を持っています。
産地ごとの違いを知り、飲み比べてみるのも玉露の楽しみ方の一つです。

まとめ

玉露は、収穫前に日光を遮る「被覆栽培」という特別な方法で育てられる、日本茶の最高級品です。
この手間ひまが、渋みを抑え、テアニン由来の濃厚な旨味と甘み、そして「覆い香」と呼ばれる独特の香りを生み出します。
淹れる際は、50~60℃の低温のお湯でじっくりと抽出するのが、その美味しさを最大限に引き出す秘訣です。
例えば福岡県の八女地域では、昔ながらの製法を守る「八女伝統本玉露」が有名で、特定の茶園ではその伝統技術を受け継いでいます。
こうした伝統本玉露は、まさに日本の茶文化の粋を集めた逸品と言えるでしょう。

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